知らない。

□先輩の家
1ページ/1ページ

山の頂上に、古ぼけたガンダムの頭部が打ち捨てられている。それがアン条先輩の家だ。北高の2年坊で、この家に招かれたのはエギ村が初めてだった。
「あ…お茶…ねえや…水、のむ?」
アン条先輩はドングリの帽子に霜柱の先端を入れてエギ村に差し出した。
「すいません!」
エギ村は恭しくそれを受け取って飲んだ。家の中には土と枯れ葉しかない。生活感ゼロ。
だがここが!南高との抗争で50人病院送りにした、あのアン条先輩の自宅なのだ。エギ村は興奮した。手に乗ってきたアリを枯れ葉でサンドして食べているアン条先輩を期待に満ちた目で見つめた。
「え…どうしたの」
アン条先輩は洞窟のような目でエギ村を振り返った。
「先輩!修行は、どこでしているのですかっ」
「はァ?…あ、ゲホッゲホッボグェエ」
エギ村の唐突な発言に驚いたアン条先輩は、喉にアリが引っかかって気持ち悪くなった。エギ村に背中をさすってもらいながらアン条先輩は涙目で声を絞り出す。
「…なん…しゅぎょ…ゲホッグエッ…おま…」
「先輩!」
そしてその時、アン条先輩の喉の辺りで、アリは、楽しかった修学旅行を思い出していた。アリは死の間際に確信した。
あの時、巣の中で好きな男子いる?と聞いたら、バージョは「いない」と、答えていたが、本当は絶対、ベラスケスの事が好きなのだ。働きアリのくせにっ…バージョの奴!
アン条先輩は少し吐いた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ