知らない。

□バー子は俺を殺す気だ
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俺の隣でスケート靴を食べるバー子の右手はフッ素加工されている。
おそらく、バー子は 俺を殺すのだろう。トマト味のスケート靴には、血塗られたスケート選手という意味が込められている。
スケート選手、とはつまりは俺のことだ。昔、納豆のフィルムで転んだ時の事を指している。
まずいことになった。
俺は最後の願いを込めて自分で自分を土佐犬の顔に整形手術し、わざと失敗した。これは、土佐犬でない、つまりお土佐だ、でない。音沙汰がない、の意味である。フジ江とはもう、きっぱりと別れて音沙汰も無いという事を表している。
だがバー子は俺を許すつもりは無いようだ。俺は彼女の髪の1本1本に小さなフサオマキザルが巻き付けられているのを見てしまった。
フサオマキザルの尾は既に巻いている。そのフサオマキザルで、更に髪を巻くという行為は、裏切った俺を、更に裏切る事でしか彼女は救われない、という気持ちのあらわれだ。
俺はふざけた顔をしてみせた。胃の腑(ふ)が裂けたような苦しみを感じているよというアピール。
だがバー子はそれを見ると、フッ素加工した腕で俺を殴りつけた。
フッ素加工だから、血糊はティッシュでひと拭きするだけで、すぐ落ちた。フッ素加工ってすごいな、の意味を込めて、俺の魂は地獄に下降して行った。
 

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