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2006/09/01(金)
ねがい

あの時、俺は餓死寸前だった。それを助けてくれたのが、あなただった。くれた干し肉は、うまくはなかったけれど、あなたの優しさはうまかった。俺はあの味を忘れない。
だから俺は、あなたのねがいを叶える。このまま病に長く苦しんで、やがて石の下に埋まるなんて、確かにあなたには似合わない。俺の中で、俺と一緒に、森を走る事を選んでくれて、嬉しいよ。
ばあさん。俺はあなたが好きだ。あなたを喰う事ができて、嬉しいんだ。
「ありがとう。さあ、早くやっておくれ。でないと孫が来てしまう。」
老婆はそう言った。
赤い頭巾の孫娘は、まだ森で花を摘んでいる。
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