【ワイルドヘヴン】

□Number-03
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『チュニ、よく聞いてね』
白い毛に覆われた、二本足の草食動物は、やさしいミミナのことばで語りかけた。
『うん』
娘、チュニは、白目の無い真っ黒な丸い瞳をキラキラさせて母親の次の言葉を待った。
『お前はもう、ひとりで走ることができるね?』
『できうよ!チュニはクルマよりはやいよ!』
ニヒヒ、と笑いながら無邪気に答えるチュニの、赤い布を被った頭を、母は慈しむように前足で撫でた。
『いい子だね。チュニ』
『うん!』
『じゃあね、これからチュニはそこから、外に出るの。出ておばあちゃんのお家に行くの。いいね?』
母は広い檻の隅に開いた排水溝を、蹄で指し示した。
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