【ワイルドヘヴン】

□Number-08
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「おいでミツ、石南花がきれいだよ。見に行こう?」
広げた兄の腕の中に少年は飛び込んだ。
「兄ちゃん兄ちゃん…」
胸に頭を押し付けて泣きじゃくる、年の離れた弟を、兄は優しく抱き上げた。
「兄ちゃん…おれじゃむりだよ…力がないんだ…みんな死んじゃう…悲しくておれ、もうだめだよう…」
少年は、兄の体を強く抱きしめた。まぼろしと知っていてもそれは温かく。
「おねがい一緒に来てよ…誰も味方がいないんだ…おれ淋しいよ…淋しくてだめだ…兄ちゃん…兄ちゃんおねがい…」
けれど兄は悲しげに首を振る。
「可哀相に…ごめんなミツ、ごめんな…」
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