ガロッツのブルース

□case-02
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「あ、あっ!」
控え室のソファーの上で目を覚ましたキュウは、バネ仕掛けの玩具みたいに跳ね起きると、
「わーんチックショー!またかよう!」
これ以上の悪夢はない、って顔でそう言った。
言った、というか、勿論キュウはガロッツだから思念テレパシーを発して喋ることはおろか、人間のテレパシーを受け取ることも出来ないので、正確な表現をするならば、キュウが音で伝えた犬語を、俺が頭に埋め込んだガロリンガルのプラグでテレパシーとして受信している、という事になる。
「わーんじゃねえよ、キュウお前、勝てた試合だろうが、これ」
俺はため息をついて、そう言った。キュウの頭に埋め込まれたガロリンガルが、俺のテレパシーを犬語に訳す。子供のオモチャではあるが、便利なものだ。しかしこんなものを使ってガロッツと意志を疎通している人間は、今時、変わり者と呼ばれるらしい。俺は必要な事だと思うんだが。
「何で負けたのか、わかってるよな?おい」
俺はキュウの頭と顔にナノマシン軟膏を塗り込みながら、確認の質問を投げかける。キュウは少し顔をしかめてから、
「相手が勝ったから?」
と、答えた。
手が止まってしまった。毎度のことながらキュウのとんでもない馬鹿ぶりは、他のガロッツの比ではないと思う。
「ざっけんな馬鹿!あんだけ言ってんのに、ガードしねえからだろうが!」
闘犬としては小柄なキュウは、1撃くらうだけで簡単に吹っ飛ぶ。避ける以外のガードをしないなんて自殺行為だ。だが俺の怒りに肩を落とすどころかキュウは逆ギレ。
「うるせえ!ガードって言葉の意味、一瞬忘れただけだっつうの!おれは悪くねえっ!」
「100パーてめえの自業自得じゃねえか!てめえ今日メシ食わせねえからな!」
「ぎゃああ!ふざけんな!ごめんなさい次回気をつけますっつってんじゃねーかクソ野郎!悪魔!」
いつ言ったんだこの馬鹿。しょうもねえ馬鹿だ。
俺は馬鹿を連れて、10万マッコイという格安の値段で手に入れた中古のグラウンドシップをエンラエの店に向けて飛ばした。
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