ガロッツのブルース

□case-02
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"エンラエの店"は、ゲームセンターと飲み屋をごっちゃにして、全体に駄目にした感じの汚い店で、辛気くさいランゲ星人のマスターが1人で切り盛りしている。あまり繁盛もしていないが、この界隈で犬を連れて入れる店は(殿堂入り闘犬とか、人気のあるレース犬、ショー犬だったら話は別だが)ここしかない。
「惑星ビール2つ。あとルルサ虫の唐揚げも」
注文をするとカウンター席で足をプラプラさせながらキュウが、
「あと焼きビードルっ!」
と叫んだ。ふざけんな。俺はキュウを睨むが。
「えー?いーだろ?酒とつまみはメシのうちに入らないって、てめーで言ったんじゃん」
こいつ全然反省が無いばかりか、人の好意につけ込みやがるとは。くそ。俺は面倒になって、結局それも注文に加えた。財布が恐ろしく軽い。今月もまた家賃をすっぽかす事になりそうだ。
「にゃっは!」
出された惑星ビールの瓶を3本爪で掴み上げ、歓声を上げたキュウは俺の気も知らないで、水でも飲むように傾ける。
「ぎゃー!惑星ビールうめえよ、うめえよー!しあわせだなあああん、おれ!」
脳天気な奴である。だが、俺はこいつほど美味そうに酒を飲む犬を知らない。喉が鳴った。俺はカウンターの上に転がっていた店名ロゴ入りのカップを、勝手に取って全部にビールを注ぎ、前腕、中腕、後腕、全ての腕に1カップずつ、つまり合計6杯のビールを持つと
「飼い犬だけ先に幸せになってんじゃ、ねえっ!」
一気に喉へ流し込んだ。
思いっきり、脳が痺れてくる。惑星ビールは、確かに最高だ。高い酒なんか必要ない。安い酒で最高な気分になれるなら、それが一番いい。
キュウの馬鹿みたいな笑い声がどこか遠くの異国の音楽のように聞こえて、俺も馬鹿みたいに笑いながら、焼きビードルを手づかみした。
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