ガロッツのブルース

□case-03
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ただ狩り船にさらわれただけならば、大した不幸ではなかった。何もわからないうちにサクッと加工されて、どこかの宇宙人類の家族の食卓に出されるのであれば、結果としてはマンションの屋上から飛び降りるのと変わらない。
その狩り船が、本社のある都市惑星にたどり着く前に宇宙海賊に襲われるという特殊な事態に見舞われた事。これがヒジリヤマの不幸であった。
茫然自失となって檻の中にへたり込んでいるヒジリヤマの目の前で、ヒジリヤマを捕獲したグート星人が撃ち殺されて、どろりと溶けた。
撃ったのは、巨大なコガネムシを二足歩行にしたような姿のギギ星人。彼こそが残虐非道で知られる宇宙海賊団"黒渦"のキャプテン、氷血のヤアゴことヤアゴ=ゼブルバズル本人であった。
無論この時のヒジリヤマに理解できるはずはない事だが、ヤアゴは、小柄で体重の軽いヒジリヤマを一目見て、「こいつはいい」と思ったのである。
地球犬、大きさからして少なくともこの先30年は賞味期間。教え込めば軽作業もできるようになるだろうし、こいつは、万が一の非常食として持ち歩くのに最適なガロッツではないか、と。
こうして。文字通り首輪を付けられたヒジリヤマは、この日以来ずっと、ヤアゴの携帯非常食として生きている。
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