ガロッツのブルース

□case-06
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キュウを連れてザムザ通りの闘犬場を後にした俺は、地下駐車場で待っているデコを迎えに行った。数週間前に酔ったキュウが蹴りを入れたせいでバンパーがV字型にへこんでしまった俺の水色のグラウンドシップから、白い触手を振って顔を出したデコを俺は抱き締める。
「待たせたな、デコ。誰かに見つからなかったか?」
『んーんへいき。おかえりジェットン』
デコは柔らかな頭を俺に押し付けて、音の言葉でそう言った。頭のガロリンガルにテレパシー訳してもらうまでもなく、俺はデコが何と言ったか身体で感じていた。
『キュウたん勝った?』
俺の背中越しに尋ねたデコの問いに、キュウが獣じみた笑みを浮かべ、
『当ったり前だしょ!』
と、答えたので俺は
「不戦勝だけどな」
と付け加えておく。
『えーすごいキュウたんやったねおめでと〜。もっと不戦勝続くといいね。そしたらキュウたん優勝できるね』
デコに悪気はない。しかし悪気がないからこそ、彼女の言葉は時に、辛辣である。ところが無反省さに於いて他の追随を許さないキュウにはそれも通じないようだった。
『イヒ、オレ魔性の不戦勝キングだからよ、決勝も不戦勝で勝っちゃうぜ、こう、念力でよ、腹壊せ腹壊せ腹壊せ…』
『すごーい。がんばってキング〜』
『おうよー、キングの呪いで相手うんこで試合出れねくしてやんよ…ククク…』
「いやな称号作ってんじゃねぇ馬鹿、デコもがんばってじゃねーよ、ちゃんと実力で勝てっつ、のっ!」
『いって!』
ケツを蹴ってキュウをグラウンドシップに蹴り込み、俺はデコを抱いたまま運転席に腰を降ろしてエンラエの店に向かった。
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