短編/連作

□吸血ヤクザ
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2008/07/02(水)
あわれ人間失格

ある男に騙され、殺人の容疑者にされた俺に、
「来いよ。大上サンが奢ってくれるとさ」
詰めた小指の傷口を舐めながら河堀はそう言った。河堀は、ヤクザ。つまり奴は、組に入れ、それしか道は無い、と言ってる訳だ。実際河堀の組は特に、俺みたいな人間失格が集まりやすいと聞く。
「頼みます」
決心した俺を連れ、焼肉屋にやってきた河堀は、皿に溜まる血だけ飲んで肉を俺にくれて
「満月だから大上サン来れねえらしい。まぁツケときゃ平気だ、どんどん食え」
尖った歯で笑った。ああやはり俺のようなゾンビや、吸血鬼の河堀はマトモには生きられないのだ。俺は暗い顔で生肉を噛んだ。
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