*short×short

□君は少しも悪くない
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「雅紀くん、私帰るね」



「あ、待って」



ソファから立ち上がろうとする
君を引き止めて、キスをする。



「んっ……」



君の右手は、俺の左手の下で
君の左手は、携帯を握りしめてる。



俺、鈍感そうに思われてるかも
しれないけど、知ってるよ。
君が、こんなキスの最中にも
着信を待っていること。



プルルル、
望みどおりに君の携帯が音を立てる。



「ごめん、行かなきゃ」



君は少し、寂しそうに言う。



「誰?」



そんなことを聞けるはずもなく



失ってしまうかも、って思うと



どうしてこんなにも君は
輝いて見えるんだろう。




君が帰った後、
1人でベッドに寝そべる。



何か食べる気も起きなければ



眠くもならない。



考えることはひとつ。




愛してるのに、愛されてない。




きっと、よくある話。
俺だけが辛いわけじゃない。




携帯をとって君に電話をかける。



プルルル…
電話の音が、静かな部屋に
鳴り響く。



当然、出るはずはない。
きっと今ごろ、電話の彼と
会っているはずだから。



「ごめんね、雅紀くん。
昨日寝ちゃってて…」



次の日は、素知らぬ顔で
俺に謝るんだ。



「あー、うん!ごめんね?
あんな時間に電話かけちゃって」



「ううん。どうしたの?」



いざ、君を目の前にすると



別れよう。



その一言が、なかなか言えない。



「あの…さ。」



「ん?あ、そうだ!
今度、あの遊園地行かない?
私、友達に無料券もらったの」



笑顔で君は、チケットを
2枚さし出す。



「うん!行こっか!」



俺も笑顔で、答える。



「やったぁ!楽しみっ」



そんな風に俺の前で、
嬉しそうに笑わないで。



どうしたらいいか、
わかんなくなるじゃん?



ねぇ、俺。
このまま、君といていいのか。
それとも、別れを選んだ方が
いいのか。



どうすることもできずに、
このまま彼氏の役を
続けるしかない?



「雅紀くん、いつ行こっか?」



俺の肩に寄りかかって、
上目遣いで俺を見つめる。



君は、俺が言いたいことが
わかってたんじゃないかな。



だから、
そんな笑顔で、繋ぎ止めてるの?



君に甘えられると、俺は弱くて



「そーだなー。来週の土曜日は?」



愚かにもその肩を
抱きしめてしまう。



「…あ、ごめん。その日は…」



突然に曇る、君の表情。



一瞬にして、理解できた。



「カレ」と会うんだよね。



「じゃあ、日曜日は?」



「日曜日なら、大丈夫!」



「じゃ、日曜日にしよっか!」




愛してるのに、愛されてない。



この苦しみは、
どこに吐き出せばいいんだろう?



でも、



わかってる。



わかってるよ。



君は少しも、悪くない。





End...
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