エゴイスト(長編)
□涙の美しさ
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(津森視点)
「上條さん?」
気づいたら上條さんは俯いていた。ちょっ、ちょっとやり過ぎちゃったかな・・・・?
慌てて上條さんの顔を覗いた。その瞬間・・・
ドキッッッ
「・・・・うっ・・・」
上條さんが泣いていた。悲しそうな顔の透き通るような綺麗な目からポロポロと雫が落ちている。
俺はなぜか心臓が止まりそうになった。
ドキン、ドキン
「か、上條さん!スイマセン、嘘っす嘘!ちょっとからかいたくなっただけですっっ!!野分はそんなことしてませんっ」
俺は静まらない鼓動に慌てながらも目の前の上條さんの涙を手で拭った。
すると上條さんは心配そうな顔で、おずおず
「ほ、本当か・・・?」
上目遣いで俺を見つめ聞いてきた。
ドキッ
また鼓動が早まった。
「は、はい・・・すみません、調子に乗りすぎました・・・」
めっちゃくちゃ怒られると思って覚悟してたら上條さんはホッとしたような顔をして
「良かった・・・」
微笑んだ・・・またドキドキしてる自分がいる。
「本当にすみません・・・」
「うん、お前そんなに人をからかうのが好きなのか?」
「え?あ、いや、そんなことないっすよ!ただ上條さん見てるとまぁ、なんていうかからかいたくなるんですよね・・・あははは」
なんで俺こんなに必死なんだ?そしてなぜこんなに焦っている?冷静なことが俺の長所のはず・・・・・
「ふ〜ん・・・あんまり俺をからかうな。そういうのマジで好きじゃないから」
「あ・・・はい。」
何か俺落ち込んでる?何で?!
「じゃっ」
俺が落ち込んでいる間に上條さんは野分に着替えを渡すために病院へ向かってしまった・・・
俺は見えなくなるまで無意識に上條さんの背中を見つめていた。
トボトボ家へ向かっている間、俺は考え事をした・・・
なぜ上條さんの泣き顔を見てドキドキしたんだ?今でも上條さんの顔が頭に浮かんでいる。
振り払おうと思ってもできない。俺は・・・・上條さんに惚れたのか・・・?
いやいやいや・・・俺は至ってノーマルで男なんか好きにはならないはずだ。
いや、でも何か上條さんって男、として見れないんだよね・・・決して女っぽいとかそういうんじゃなくて・・・・
性別がどーのこーのじゃなくて、上條さんは上條さん、みたいな?
そういえば野分も男が好きなんじゃなくて上條さんが好きなんだ、とか言ってたよな・・・
ん?じゃあ俺は本当に上條さんに惚れ・・・た?
うっそぉおおお?!マジで?!後輩の恋人だぞ?いいのかつもりぃいい・・・・
はぁ・・・・まじか、まじだ。だってさっきから上條さんのことしか考えてないもん。
もしかしたからかってたのも好きな子を苛めたくなる・・・みたいな考えでやってたのか・・・?!
俺は頭がごちゃごちゃしながら家へ帰った・・・
寝るときもなぜかずっと上條さんのことを考えていた。
俺って嫌われてるのかな・・・俺って上條さんからしたらどんな奴に見えてるのかな・・・・
いつの間にか俺は寝ていたようだ・・・・