Short 1
□誓いのキス
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『あの、さ…』
水族館の出口にさしかかった時、希が歯切れの悪い言葉を発した。
『えっと、樹は…観覧車嫌い?』
捨てられた子犬みたいな心配そうな瞳をして俺を見上げてくる。
「嫌いじゃないよ?
でも、希が高いとこダメって聞いてたから乗れないと思って…」
『水族館の隣に観覧車あっただろ?
あれ、乗りたい……///』
高所恐怖症って聞いてたからどこに行くにも高いところは避けてきたつもり。
でも、あまりにも希が可愛らしくお願いしてくるから希の手をひいて観覧車にふたりで乗り込んだ。
「希、大丈夫…?」
俯いたまま動かない希。
「俺、そっち行こうか?」
希の隣に行こうと立ち上がろうとした俺を、押し倒す形で希が覆いかぶさってきた。
『樹ぃ……動かないで…///』
俺の胸に抱きついて離れようとしない希。
「なんで急に乗りたいだなんて言ったの?」
希の背中をさすりながら子どもをあやすように言葉をかける。
『言いたくない…///』
胸に埋めている希の顔がほんのりと赤くなってるのが分かる。
「言わないと動くよ?」
そう言って希を持ち上げようとしたら必死にそれを阻止しようと抵抗する。
『言うよ!!
言うから動かないで…』
俺を見る希の顔は真っ赤で、瞳からは大きな涙が一粒流れた。
「怒ってないから泣かないの。
それで、なんで?」
希の頬に流れた涙を指で拭き取り、希と視線を合わせる。