03/09の日記
10:03
終わらないよ。
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さて、終幕を迎えた物語。
生まれ出でてこのかた、孤独と墓場に囚われ続けた少女は振り返らずに別れを告げた。
彼女は知らない。
引き留める術も、悲しい、と口に出す術も、逝かないでと、請願する術も。
それは、理に反するから。
そして少女は、血族が、町中の皆が彼女を忌避するよりも深く根深く、己を忌避していたのだから。
けれどね、愛しい子。考えてみて欲しい。
開け放たれた窓の先の、己にしか見えぬ灰を見詰め、誰にも気取られまいと涙を溢す後ろ姿を見た時の、この気持ちを。
知らない、気持ち。
けれど満月から溢れ出た涙は、この世の何よりも美しい。
それだけは確かだ。
だから、終われない。
終わらない。
人はきっと、生を超え、死を超えて初めて真の己を知るのだから。
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