コラボしちゃったんです。

□The magic of the full moon.
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今日は、満月だ。
月明かりに照らされたアニスの寝顔を見て、手元のグラスを傾ける。グラスの中身であるケテルブルクで購入したウイスキーは、今まで自分が飲んできた物の中では上から数える程、美味だった。

自分の視線の先で眠っているアニスの前髪を掻き分けて、見えた額にそっと口付ける。すると、眉を寄せてからうっすら目を開けるアニスの姿があった。


「おや、起こしてしまいましたか」
「大佐。何、飲んでるんですかぁ…?」


眠たそうに欠伸を一つしながら問うアニスだったが、持っているグラスの中が青く微かに光っている事に気が付くと、綺麗ですね、と瞳を輝かせながらこちらを見た。どうやら、珍しい物に興味を持ったらしい。


「これはですね、以前ケテルブルクで買った曰く付きのウイスキーですよ。このウイスキーは何故か満月になると青く光り、この時これを恋人二人で飲むと、何かが起こるらしいですよ?」
「へぇ…一体何が起こるんですかぁ?」
「さぁ…私にもわかりませんが、禁忌となったくらいですから、余程の事なんでしょうかねぇ」


そして、ウイスキーを一口飲む。それを少し舌で転がして味わうと、その様子を見ていたアニスへと口付けた。

舌で無理矢理アニスの口を抉じ開け、先程のウイスキーを流し込む。その後も深く口付けたまま、飲み込むように促すと、コクン、と音を立てながらアニスは飲み込んだ。それから、漸く唇を放す。


「の…飲んじゃった!?大佐、何が起こるかわからないのに…」
「商人の言葉なんですから、真に受けてはいけませんよ、アニス。きっとこれを売りたいが為に言った嘘ですよ。さぁ、もう寝ましょう?」


どことなく腑に落ちない表情を見せるアニスの頭をそっと撫でると、布団へと入って静かに目を閉じた。







*  *  *




翌日、小鳥の囀りに目を覚ます。自分の横にいる筈のアニスの頭を撫でようと手を伸ばす。だが、その時ふと違和感に気付いた。アニスは癖っ毛だ。こんなにサラサラした手触りの筈がない。

そう思い、恐る恐る目を開けて――絶句した。目の前で寝ているのは、紛れもなく自分のなのだから。


「――っ!?」


一体何が起こっているのか理解出来なかった。慌てて飛び起きて鏡を見る。そこには、癖のある黒髪、平らな胸、小さな身体。おまけに、下半身の違和感。見慣れた顔、それは、間違いなくアニスの姿だ。


「(どうして…どうして私がアニスの姿になってるんだ!?)」


心の声での叫びに、答える者は誰も居ない。それ以上はこのありえない状況に動揺している為か、何も考える事が出来なかった。その時、ベッドの上で寝ている、ジェイドの姿をした誰かが僅かに動き、そして起き上がった。

そして、こちらの姿を見たと同時に固まった。
その行動から、自分の身体の中に誰が入ってしまっているのかを予測してから口を開く。


「おはようございます、アニス」


言葉を発した後に、笑顔まで浮かべてみせる。すると先程まで固まっていた目の前の人物の唇がピクリ、と動いた。そして、即座に大声が飛んできた。


「は、はぅあっ!私がいる!?何で?どーしてぇっ!?」


その口調から、本当にアニスであると確信する。そのアニス(外見はジェイド)に近付いて、人差し指を口元へ当てる。そして、その人差し指でホテルへ備え付いている鏡を指差すと、アニスは絶句した。そんなアニスを見て、静かに口を開く。


「アニス、わかりましたか?私は貴女に、貴女は私に。俄かには信じ難いのですが…私達は中身が入れ替わってしまったようです」


最初はただ驚いているだけであったアニスも、多少落ち着いたようで、その言葉を素直に受け入れるようにゆっくりと頷いた。だが、その表情にはまだ不安の色が隠せないでいる。

それは、そうだ。この状況がたった一日で終わってしまえば良いが、そんな保障もない。下手をすれば一生このままかもしれないのだから。


「てか、これからどうするんですかぁ?原因だってわからないのに…」
「原因なら、あるではないですか。昨日の夜貴女に飲ませたでしょう?」
「あぁ、あのお酒…」


そこで言葉が止まる。そして、その後何かに気付いたようで再び大声を出した。


「って、大佐が飲ませたせいじゃないですかっ!?」
「今更、過ぎた事を言っても仕方がないでしょう?とりあえず、皆さんに説明して、戦闘メンバーからは外させて頂きましょう。明日になっても元に戻らないのであれば、ベルケンドであのウイスキーについて調べてみましょうか」


自分の軍服の上着をアニスへ手渡すと、着始める。そして、アニスが完全に着た事を確認すると、部屋のドアを開けて外へ出た。




*  *  *




漸く、長い一日が終わろうとしている。唯一休めるベッドの上に寝転がり、安堵の溜息を吐いた。

先程、シャワーを浴びに行ったのだが、自分の身体ではない身体を洗うというのはどうしていいのかわからず、浴室から出て来る時には、入ってから一時間が経過した程の時間だった。

今日一日、仲間へ事情を話して、理解してもらえたのは良かったが、アニスが自分の身体でいつもと変わらずに話す事がキモい事この上ない(ルーク談)らしい。

これは昼間に、アニスが自分の身体でない事を忘れて、はぅあ、だのきゃわーんだの言った事が原因だ。確かに、自分でも気持ちが悪いとは思う。





こちらは、アニスが自分の真似をしているとしか聞こえないので、あまり気にされる事もなかったのだが。等と今日一日の出来事を振り返っているうちに、夜も更けていく。

後はこのまま眠るだけだが、女になったからといって、中身は男と変わらないのだ。強い性欲が身体を襲う。

だが、今の身体はアニスの身体だ。少女の身体で自慰をするというのは、背徳心があり、どうも頂けない。しかし、このままでは性欲は満たされない。




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