浮世話

□執行猶予3年
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3年。
僕の執行猶予。

残りも僅か。
桜を見る度、胸が詰まる。
仕事場までの桜並木。
今じゃもう新芽を出して、
これからの恵みに備えているよう。

ついこの間まで満開だったのに。
東京で見る桜は、
これが最後かもしれない。

今日もその並木道を、
仕事場へ向かう。

もう夕方。

おばさんは夕食の準備に買い物へ。
ある人は早々に仕事を終わらせ家路へ。
学校から帰る子供たち。

視界一面春色。
その春色が視界に心地よかった。

風が通る過ぎる度に、
桜が雨のように降ってきて、
頬にあたり散っていく。

その全てを後に見送って、
ペダルをこいだ。

そう、もうそれらは、
遠くの後ろにある。

俺はどこに向かって、
走っているんだろう?

行く宛てなんかなかった。
何処にも。

ただ、東京に出てきたかった。
此処ではないどこかに行きたくて、
飛び出した。

井戸の中しか知らなかった俺は、
大海へ出てしまった。
出てきてすぐに徒波にのまれ、
溺れた。
死にかけの処這いあがって、
此処はどこか分からなくなった。

でもこうして、
走ってる。

何処へ向かうのか分からない道を。
とりあえず今は、仕事へ。


もうすぐ雨の時期。
この重たい空気も、
見えない空でも、
俺にはとびきりの今日にしたい。

来年はこの桜を見れないかもしれない。
俺はまだ何も付かんじゃいない。

そんなこと言って、
一生を終えていくだけかもしれない。

俺等はただ…、
ただ、幸せになりたかった。

幸せかもしれない。
幸せを知らないだけで。
何と愚かなんだろう。

そんな愚かさを抱え、
飛び出したこの街の片隅で、
今日もまだ生きてる。

まだまだ諦めきれなくて。


俺は、
何処に逝くのだろう。

還る場所はどこだろう。




【執行猶予3年】


これは、
先生も親も少々手を焼いた、
そんな3人の無法者のお話です。





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