黒の琥珀

□第5Q
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「重たいな……部活、遅刻しちゃうかも……」


現在、栞は教師の雑用を任されていた。ダンボールいっぱいに入っているのは、今度行う中間テストが入っているらしい。それを資料室に置けばいいのだが、何分、彼女は非力な為、歩行速度が著しく低下している。


そもそも、このような雑務は学級委員がやるべきではないのか。自問自答したが、今仕事を任されているのは自分だ。泣き言を言ってはいけない、と自分を叱咤した。


「あ、相田先輩だ……」


角を曲がると、そこには軽やかなスキップをしているリコの姿が。彼女を呼び止め、今日の部活動を遅刻する事をひとまず伝えよう。栞は少し大きめの声で彼女を呼び止めた。


「相田先輩!」


「ん?あぁ、栞ちゃん」


「すみません。今日、少し遅れると思います……これ運ばなきゃですし」


「分かったわ。……手伝おうか?」


「いえ、大丈夫ですよ。それより、何か良いことあったんですか?」


「分かる?……実はね、練習試合、《キセキの世代》いるトコと組んじゃったの♡」


「え」


じゃあねー!と、満面の笑みで手を振って去っていくリコ。栞はただ呆然とした様子で、しばらく立ち尽くしていた。彼女の思考は、帝光中にいた頃の選手達の面々。一体、どこと組んだのだろう。一人悶々とする栞だった。







ドサッとようやく資料室に辿り着き、彼女はダンボールを置いた。暗い資料室には、たくさんの資材が置いてある。栞はチラリと今置いたばかりのダンボールを見やった。


「………」


その中には、中間テストの内容が。ゴクリと唾を飲み込み、恐る恐る手を伸ばす。テープを貼っていないダンボールは、さながら『見てくれ』と言わんばかりの様子だった―――が。


ダンボールに手をかけた瞬間、パッと素早く手を退けた。一体、自分は何をしようとしていたのか……大きな罪悪感に苛まれた。はぁ、と一人溜息をつき、逃げるようにして資料室を後にした。
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