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□羽なんかいらない
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自分の背中に大きな手のひらを宛がって
その部分を一心に見つめてなんとも真剣な顔をするものだから

初めは何を言われているのか解らずに
振り向いた顔を少しだけ傾げたナミ。


しかしその言葉の意味がようやく飲み込めると

全身の力が抜けて

トキメキだした心臓は収まって

ちょっとだけ情けない気持ちになって挙げ句の果てには一気に笑いが込み上げた。




「ふっ…アハハ!は…羽ってあんた、私をなんだと思って…くっ、ふふっ」


お腹を抱えて笑いだしたナミにゾロは少しだけ驚いて不満そうな顔を見せる。

しかしそんな表情が更にツボを刺激して

どうにも止めきれなくなった可笑しさは

目の前の仏教面な男に対する愛おしさの現れでもあるようだ。とナミは思った。


「いや…、スカイピアの奴らにもあったじゃねぇか…って、笑いすぎだてめぇは!」


「だって…いくら空にいたからって、2年でどうやったら……ふっ、アハハ」



だってだって、

2年ぶりに再会して

真面目な顔で何を言い出すかと思ったら

空島にいる間に羽が生えたかどうかを気にしていたなんて……。


もしかしたら、会いたかった、もう放さない
なんて甘いセリフのひとつでも吐けるようになったのかしら?

なんて淡い期待を見事に打ち砕いてくれるんだもの。



「おっ、おかし…ふふっ、アハハ」



「……」



ナミがあまりにも楽しそうに笑うので

やはり自分は要らぬ心配をしていたのかもしれない。

とバツが悪くなって頭をかくと、

朗らかな雰囲気に気がついたクルーたちがこちら側に興味を示した。



「おいナミー、なんだかご機嫌だな」


「何をそんなに笑ってんだ?」



ルフィたちに問いかけられて涙目を拭いながら
途切れ途切れに言葉を紡ごうとする。



「だって…ゾロがねっ、ふふ、アハハ……あたしに…ふっ」
「だぁーッッ!!何でもねぇっ!」



急に羞恥心を覚えてナミの言葉を遮る。

バカにされるに違いない。
コックはさっきから気絶しているからいいとして、笑い者にされるのは御免だ。

「きゃっ…!」


そのとき船が急に傾いて

咄嗟にナミの身体を支えたゾロは

触れ合った熱を意識せずにはいられなかったが

すぐに体当たりしてきた巨大な海王類の撃退に追われることとなり



それからだんだんと始まっていく魚人島での一件に
麦わらの一味は身を投じる。



二人の会えなかった時間を埋める安らかな一時はそうしてしばらくの間お預けとなった。
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