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□羽なんかいらない
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「あ…なんか飲む?」


「いや……」





魚人島での騒ぎがおさまり、新世界を渡る旅路の途中ロビンが見張りの日がやってきた。


再会してからこの日まで、麦わらの一味らしい大騒動が続き
結局は二人きりでゆっくり話す機会もなかったために

互いにぎこちなく視線をさ迷わせ、気まずい空気が流れる。

二人きりの夜、どのように過ごしていたのか。

その感覚を取り戻すことを
2年という月日が邪魔をする。



話したいことはたくさんある。

聞きたいこともたくさんある。


だけど何から始めれば良いのか…

もどかしくも胸が高鳴るこのときを先に破ったのはゾロだった。



「……」



隣り合わせでベッドに座るナミの手にそっと自分の手を重ね、ゆっくりと包み込む。

一瞬ぴくりと反応した手の甲にしだいにゾロの熱が伝わって

ナミの視線がその手を辿ると

真正面を向いたまま少しだけ眉をひそめる男の顔があった。
その横顔が昔より凛々しく、切なげな大人の顔のようにも思われて息が苦しくなる。


そんなナミの視線に気付いてその眼差しに応えて見つめ返すと、

抑えきれなくなったゾロの想いは一気に溢れて

力加減もわからず細い体を抱き締めた。


「……っ」


「ナミ……っ!」



瞬間、ふわりと香ったナミの匂いが2年前の二人をフラッシュバックさせ


それ以来、募り続けるばかりだった愛しさを

目の前の女に伝えるように

大事に大事に口付けを交わした。










「空には……」


「……ん?」



二人で毛布にくるまりゾロがナミの頬を優しく撫でる。

気持ち良さそうに目をつむって自分の言葉の続きを待つナミに

今すぐにでも覆い被さって
めちゃくちゃに犯したいという欲望をおさえる。





「空にも…たくさん男がいたか?」



「はぁ…?」



くすっと笑って目を開けるナミに

この前かららしくもない心配ばかりをしていると思う。

だけどゾロは気になって仕方がなかった。

こんなにいい女を放っておく男などいるものか。




「…どうなんだ?」


「…いたわよ?たくさんね」



真剣な表情が可愛くて少しからかってみたくなる。


「…なんもなかったか?」


「え?」


「そいつらと…何もなかったか?」


時々物凄い独占欲を発揮するゾロに呆れながらも、ナミの胸の奥がくすぐったくなるのは事実だ。



「いろんな知識を教えてもらっただけよ」


「知識…?」


ゾロの眉がぴくりと動いた。


「えぇ。島には歳上の紳士ばかりで、みんな私を可愛がってくれたわ」


「か、可愛がる…?」



低くなる声に、これ以上からかうと仕返しが怖いと判断したナミは

自分の頬の上で力の入る指を優しく握って笑う。



「えぇ。若い子が珍しかったのかしらね?
おじいちゃんたち…」


「は…?」


「だからね、空島にいたのはおじいちゃんばかりで、新世界の気候についてたくさん教わったわ」


「……」


「ゾロ?」


部屋が暗いために表情がよく読み取れないナミは

ゾロが怒っているのではと不安になって顔を覗き込む。




すると急に周りの空気が揺れて熱い身体が覆い被さって



余裕のない激しい唇が降ってきた。
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