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□羽なんかいらない
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高い体温と荒い呼吸を受け止めながら

嬉しさでくらくらする頭を保ち
ナミもゾロに気になっていたことを聞く。




「あんたこそ…あの幽霊女と一緒だっ…んっ…!」


その言葉はゾロの舌によって封じられ、
構わず身体に手が這ってくる。



「ちょっ…あの女の子…ぁっ…」



もうゾロがナミの質問に答える気はないのだろう。

いや、答える必要もないくらい
こんなにもナミだけを求めていたという想いを全身でぶつけてくる。



そんなゾロがたまらなく愛しくて

離れている間、何度も何度も触れたいと願ったその温もりを求め背中に手を回す。



それを合図にゾロはナミの身体を引っ張り起こし、向かい合わせに座らせて服を脱がす。


以前にも増して洗練された目の前の綺麗な肌に息を呑むと

下着を外すためナミの背中に手を回した。






「……安心して?生えてないから」




背中まできてピタリと止まったその手に
ゾロの思考の断片を捉えたナミは穏やかに笑った。




「…そうか良かった。…飛んでっちまったらどうしようかと思ってた」




ニヤリと笑うとカチャリとホックが外されて
その手の中に、優しく捕らわれる。






裸の身体を隅々まで確かめて

ナミに羽が生えていなくて良かったと

ゾロは心底安堵する。


バカバカしい心配かもしれない。


だけどもしも飛んでいかれたら、いくら手を伸ばしても届かなくなってしまう。

羽なんかいらない。

行きたい場所があるならば

どこへだって俺が手を引いてやる。


きっと俺らは不自由なくらいが丁度良いのだ。


逃げたくなったとしても


俺が追い付けるスピードで逃げてもらうために。








2年経って相も変わらず不器用なその男は


2年経ってとびきりいい女になった愛するひとに



会いたかったとか

もう放さないなんて甘いセリフ


決して面と向かっては言えないけれど、


華奢な背中を何度も何度も確かめる無骨な手が


いつまでも近くに居て欲しいと叫ぶ心からの響きとなって


彼女の胸に沁み込んだ。




これから先、どんなことが待っていようとも


すぐにその手を掴める位置でお前の側にずっと居続けよう。





そうしてゾロは小さな決意を胸に抱き




激しく乱れる呼吸を整えることもせず





自らの手を力一杯に伸ばす。








決して飛べない最愛の人へと。










END
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