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□夜の月には手を振らない
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まさか自分の気持ちと真逆のことを言われるとは思ってもみなくて、想像以上に、ナミに不安を与えていたのだと自分自身にため息をつく。
「なんでそうなんだよ…」
「だって…そうじゃない!いくらなんでも、こんなに避けられたら、わかるわよそれくらい。馬鹿にしてんの!?」
布団の中から聞こえるくぐもった声が徐々に熱を帯びる。
「避けてねェ」
「えぇ、そうよね。ヤルときは避けてないわよね。でも、それ以外は避けてるわ」
「はァ……?」
「身体だけあればいいんでしょ?あんたの中の、私の存在意義ってそれだけなのよ」
「おまえ…そんなふうに考えてたのかよ…」
「この現状で、どう考えればそれ以外の答えに行き着くのよ!?」
「……ナミ、顔上げろ。一回布団から顔出せ」
ナミの顔を隠している布団を取り払おうとするが頭の下に巻き込んで強く掴んでいるようでなかなか取り払えない。
「い…やっ!もういい!はやく出てって!!あんたなんか嫌い…っ!もうわかれ…っ」
「…っ、ナミっ!!」
布団ごとナミの背中から覆いかぶさり強く抱く。
こんなの……とても聞いていられない。
「………」
「いま…なんて、いおうとした……」
「………」
その先の言葉は、今まで戦闘で負ってきたどんな傷よりも…俺にとっては痛いはずだ。
「俺は嫌だからな。絶対に、頷かねェ。
ナミ……怒ってんなら、悪かった。そこまでおまえを追い詰めてたなんて…ほんとにすまねェ。おまえの気持ちを考えてやれなくて……。
だから、頼むから……心にもないことなんて、言うんじゃねェ…………」
胸の苦しさを吐き出すような俺の熱い息が布団越しにナミの首筋にかかる。
「………だったら…どうして……?」
ナミは少し落ち着いた様子で、身体の力も抜けたのが俺の腕にも伝わってくる。
「たいしたことじゃ…ねェ……」
「………………」
「わ、わかった!言う!ちゃんと言うから、睨むな!」
この期に及んでまだ言わない気かという無言の抗議と睨みが布団の中からでも伝わってくる。
せっかく収まった彼女の怒りをこれ以上煽るわけにはいかないと、腹を括った。
さっきのような言葉を投げられるよりは、マシだ。
大きく息を吐いて、軽く吸う。
戸惑いがちに開けた口から、
ナミと一緒に寝られない理由を溢した。
「寝相………」
「は………?」
「……おまえ、寝相悪ィ」