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□呼吸からはじまる
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「あっ!それおれの肉!ずりーぞエース!!」
「ルフィおまえはさっきそっちのハンバーグ食っただろうが!」
「それもこれもナミさんとビビちゃんのだ!!てめェら底なし兄弟の分はもうねェよ!!」
ペシャン
と紙パックを潰したナミが顔をあげる。
「あんたら少しは黙って食べらんないの!?見てみなさいよ!屋上中の視線がこっちに向いてんじゃない!!」
「「「…………」」」
「まぁまぁナミさん……」
昼休みの屋上、騒がしい面子の中には昨日見かけたナミの友達もいて、
まるで花見でもしているかのような喧騒に苦笑いを漏らしている。
「ナミ、これ食えよ!うめェぞ!」
「おれが作ったもんでナミさんを誘惑してんじゃねェ!そしててめェはそっちの皿に手ェつけてんじゃねェ!」
「痛ってー!!踏むなよサンジ!…あー、もうちょっとだったんだけどなァ…おれの手伸びねェかなァ」
「ルフィさん、私のあげますから」
「ほんとかビビ?!おまえいい奴だなー!」
「こいつに気使わなくていいのよ?ビビ」
「そうだぜビビちゃん、優しい君も素敵だけど、ここにいる野郎共は全員珍獣とでも思ってくれて構わねェ」
「おいおいその珍獣とやらにはおれも入んのかよ」
「見た目はてめェが一番そうだろうが、長っ鼻」
「おまえこの神秘の鼻をバカにすんなよー?この鼻はな、ピノキオよりも気高く…」
「はいはい」
隣に座るナミの皿に乗っていたミートボールをつまみながら、どうやってこいつらに昨日の件を宣言しようか考える。
ズバリと言ってしまうのは簡単だが何の脈略もないままだといささか不自然だ。
つーか、ミートボール取ったことに誰も気づきやしねェ。
「あれ……?なんか減ってる…?」
「だっ!ルフィまたてめェか!ナミさんのおかずを返しやがれ!」
「違ェっ!おれが食ったのはウソップの肉だ!」
「おれかよ!!」
「おれが食った」
「は?あんた?」
ナミの訝しげな視線とサンジの「てめェかマリモ」という声が突き刺さる。
「あァ…だからこれやる。好きだろ?」
「あ…うん…ありがと…う?」
ナミの皿に苺を乗せてやると一気に機嫌がなおる。
「やっぱりおふたりお似合いですね。本当に付き合ってないんですか?」
「「「…………」」」
屈託のないビビの笑顔に一瞬、時が止まる。
そんな凍りついた空気に気づくことなくどうなんですか?と言いたげな興味津々顔でおれとナミを交互に見る。
こいつ………ド天然か?
「……ハハ、それは違うぜビビちゃん」
「そうなんですか?でも私には以心伝心に見えます」
「そいつはふたりが幼なじみだからさ。剣道バカのマリモが学校屈指のマドンナ、ナミさんと?あり得ねェ!」
ハハハと乾いた笑いを漏らすサンジ。
悪かったな、剣道バカで。
「そうだぞビビ。ナミはおれと付き合う予定なんだ!」
「えぇぇぇ?!そ、そうだったんですか!?エースさんと…」
「だァァァ!違う!違うよビビちゃん!てめェは性懲りもなくまたそういう不可思議発言を……」
「おれは誰の束縛も受けねェ!欲しいもんは力で奪う。それだけだ!」
「海賊かてめェはッ!」
「おう!それいいな!」
「ノッてんじゃねェよ!」
「とにかくナミは誰にもやらねェ!」
「ふざけんじゃねェ!どこの馬の骨ともわからねェ野郎にナミさんを渡せるか!早く卒業しやがれ!」
「留年してナミと同じクラスになってやる!」
「うおいっ!2年もダブる気かよ!」
「………ハハ、くだらねェ」
不毛な言い争いに思わず苦笑を漏らすとその場にいた全員の視線がおれに向いた。
ちょうどいい。