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□呼吸からはじまる
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おれの足の間にすっぽり収まったナミは借りてきた猫みたいに大人しくなって

緊張からかわずかに肩が張っている。


そのたどたどしい態度が嬉しくて、コントローラーを床に置いた手で細い身体をぎゅうぎゅう抱く。


だっておれを“幼なじみ”としてではなく“男”として意識してるってことだろう?



「ナミ」

「っ、ちょっ……」



小さく身動ぎして顔だけ振り向いたナミの頭をその向きのまま手で押さえて固定し、唇が触れる寸前まで顔を近づける。




「……どうした?してほしいことがあるなら言ってみろよ…」


「…〜っ!」



こいつの羞恥に悶える涙目がたまんねェ。

どこの世界にも好きな女を泣かせて喜ぶ男は多い。



「言わなきゃやらねェ」


「な…にが……」


「とぼけんな。顔見りゃわかるってんだ…何年幼なじみやってたと思ってる」


「…………」



だからわかる。こいつが意地でも「して」なんて言わねェことも…。




「……仕方ねェな…」


「え………っ」



押さえていた手でナミの頭をくっと持ち上げてキスをする。

結局、我慢できないのはおれの方。

おまえをからかって困らせて振り回しているふりをして、

余裕がないのはおればかり。


「んっ…」


初めてのキスよりも甘いそれにナミが溶けてきたところで舌を割りいれる。




なんだこれ……制御きかねェ……




「はぁぁ……おまえ、ほんと短ェな…」

「え……ゃっ…んんっ!」



短いスカートから伸びる白い太ももを撫で、唇に食らい付く。


ダセェ…余裕の欠片もねェ……



「ナミ……」

「っ、ちょっと、まっ…ゾロ…」

「心配いらねェ。取って喰うだけだ」

「その心配をしてんのよ!!」


既に第2まであけられているシャツのボタンをさらにひとつあける。




「いいだろ…そういう関係だろ?おれら…」

「そ…そういう関係って……」


胸を隠すように身体の前で組むナミの腕を掴む。



「おまえはおれの女だろ……?」

「そ、そうかも…しれないけど…」

「…けど、…なんだ?」

「はっきりそういう話した訳じゃないし…みんなにだって……」



おいおいまてまて



「そりゃあはっきり付き合うとか…そういう話はしてねェが、周りの奴等にはおまえが否定してんだろ」

「だっ…だって!」

「どうして人目を気にせずあぁいう態度をとるかって?……そりゃあおまえがおれの女だって見せびらかしてェからに決まってんだろ」



ナミの目が大きく見開かれる。

子供みてェにふれ回って、

ナミに近づく男共に、こいつはおれのだ、触んじゃねェと言って

どこでも手を繋いで、キスをして、見せつけてやりてェくらい、浮かれてる。



ほらな、好きなのはおれの方ばかり。





「おまえは、おれが彼氏じゃ不満か……?」


「そんなんじゃない……けど……」


「けど……?」


「こ、こういうの、初めてだから…恥ずかしくて…どうしていいか、わかんないのよ……」


「……………」





あー………はいはい。


おれはどこから喜べばいいんだ?


とりあえず、“初めて”のくだりか?






「ゾロとそういう関係になれたこと自体は……嬉しいとおも……っ?!」


「おまえ…素直だな…今日…かわいい……」


「〜っ!!」



ガバリと後ろから大きく抱きしめる。




「それじゃあやっぱ周りの奴等に言っとくか」


「えっ!?」


「おまえがおれの女だって」


「な…っ!」


「そしたらおまえだって隠す必要もなくなるし、おれらの関係もはっきりする。一石二鳥じゃねェか」


「け、けど、どうやって……」


「まァそこは折りを見てだな」


「……………」



その不安げな顔は失礼にあたるレベルだぞ……



「それまでは容赦してやるよ、イロイロと……」



そう言ってニヤリと笑うと察するところがあったのか顔を赤く染めたナミ。


好きな子にそんな顔されちまうと、いじめたくなるっつーのが


世の中の相場と決まってる。


腕の中で押し黙った震える子猫を痛いくらいに抱きすくめた。
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