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□鼓動までのカウントダウン
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「なぁマリモ知ってるか?今年の新入生にとんでもねェかわいこちゃんがいるらしい」
「あ?興味ねェ」
「なんでもナミさんっつうこれまた麗しいお名前でよ、才色兼備な美少女なんだと…あー、お目にかかりてェ」
「……………」
「鼓動までのカウントダウン」
2年でも同じクラスになってしまった腐れ縁の金髪が
窓の外を仰ぎ見てまだ見ぬ新入生に想いを馳せる。
良くも悪くもどこにいても目立ってしまうその美少女とやらに
腕組みをしたままため息をひとつ吐き
無類の女好きに現実を教えてやろうと口を開いた。
「………だがよ、そいつは気が強くて人使いのあらい魔女みてェな女だぜ?」
「はァ…!?何でてめェがナミさんについてそんなに詳しいんだよ?…まさか知り合いか?剣道部じゃねェだろうな?」
夢を打ち砕いてやるつもりだったおれの言葉に違う意味で食い付いたサンジは、
入学当初から噂になっている様子のナミによっぽど会ってみたいのか
物凄い剣幕で捻りよってくるものだから自分の机をずらしつつ片腕で押し留める。
「知り合いっつーか……幼なじみ、だな」
「まじかよ…よし、紹介しろ!今すぐだっ!」
「はァっ!?もう授業始まんぞ!?」
「待っててねナミさ〜ん!!」
「おいこら引っ張んなっ!!」
あと数分で1限が始まるというのに下の階の1年の教室までおれを連行し
既に目をハートにしているサンジに呆れつつ
珍しく遅刻せずに来てみればこれだと頭をかく。
早起きなんてするもんじゃねェ。
「で、何組だ?」
「……3組」
入口から中を覗くといつもの窓際の席で太陽によく映える髪を輝かせながら頬杖をつくナミ。
あァこうしてみると確かに目立つ。
まだまだ制服に着られているような垢抜けない1年の中で、
何もかもがきちんと整って完成された外見は
嫌でもこういう男共の目を惹き付けるのだろう。
「ぬァミすわ〜んっ!!」
勢いよく教室に飛び込んだサンジに
呼ばれた当人はおろか、クラス中の視線は金髪に集中する。
そもそもどいつがナミだかまだ言ってもいないのに
この色ボケ眉毛のセンサーは的確にナミを捉えたようだ。
「初めまして、2年調理部のサンジと申します。
あぁぁ、なんとお美しい…おれは君の瞳に火傷しそうだっ!!」
「……はぁ、どうも」
教室に入ってナミの手を取るサンジの横に立つと
ひきつった笑顔を見せるナミと目があった。