novels2

□身を知る雨に
1ページ/10ページ




覚束無いのは行く手を遮る水溜まりのせいで


靴を汚さないよう進むにはどうすれば良いのかとそればかり





本当にそればかり考えていた。



















「身を知る雨に」






















怒るつもりなんてなかった。

内に宿した苛々は確かにそろそろ限界だったけど

それを表に出したら聞き分けのない子供と同じで

端から見たらどうしようもない我が侭女に映るってことくらい

自分でもわかっていた。



慌ただしい集結を遂げて以来、ナミとルフィがゆっくり話をする機会なんてなくて。


なのに船の男共ときたら
興味があるのは噂の女海賊で

絶世の美女だっただの仲間に誘えばよかっただの
いつまでもルフィに突っかかる。

いい加減、自分の知らない女の話で笑っているルフィの顔も見たくなくて、

囃し立てるクルーたちに「いつまでも現を抜かすな」と至極当然のことを言ったまで。


ただ少し、棘のある口調になってしまったかもしれなかった。

だけどナミとて2年間、遊んでいたわけじゃない。
ルフィのために磨き上げ、成長した自分を見てほしい。


強くなったとか綺麗になったとか、そんな贅沢な言葉なんていらないから


伸ばした髪のことや新調したピアスのこと、雰囲気が変わったなんて些細なことでいい。

何でもいいから気づいてほしい。



それなのに




「お前は変わらねぇなナミ!」





なんてルフィが言うものだから

その言葉にこの2年間を丸ごと否定されてしまったような気がして


とうとう腹の底に溜め込んでいた燻りが口をついて飛び出した。



「悪かったわね…変わってなくてっ!!」




毎日どんな思いで雲の上から地上の海に想いを馳せていたか


必死になって天候の科学を学んでいたか


誰の…



誰のために………!




溢れる思いは何一つ言葉にできなくて

代わりに出てきたのは不機嫌を剥き出しにした幼稚な言葉。


これではまさしくルフィが言う通り、何も変わっていないではないか。


そもそもルフィは2年間で改善されなかった私の短気な性格を指摘したのに
更に怒ってどうするのだ。


わかってはいるものの

私が怒る理由なんて知る由もないルフィがまたケラケラ笑うものだから

胸のムカつきが飛び火する前に早々とダイニングから退散した。











と、これが昼頃の話である。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ