novels2
□前編
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拾ったのは泥棒猫。
盗まれたのはこのハート。
「泥棒猫を盗め」
side-Sanji
「だめに決まってるだろ」
ビーカーの半分ほどを染め上げた原色の液体を睨みながら、声色を変えずにチョッパーは言った。
いかにも身体に悪そうな添加物や合成科学物質いっぱいのそれが傷に効く薬になるというのだから、にわかに信じがたい。
無農薬野菜でも食べた方がよっぽど治りが良いんじゃねェか?
「……そんなこと言わずによ、ちょっとでいいんだ。
せめて写真を撮る時間くらい、お目にかかれればいいんだよ」
「だめったらだめだッ!医者のおれが、そんな非人道的なこと、できるわけないだろ!!」
1億の首を頭に持つ海賊が人道説いてどうすんだ、オイ。
「チョッパーてめェ、ナミさんの可愛いにゃんこ姿を見てみたくねェのか?!それでも男か!?」
「そんな変態みてェな願望を抱く男はサンジ、おまえだけだぞ!
だいたいナミになんて言われるか…お、おれはいやだッ!まだ死にたくねェよ!!」
「本望だっ! おれが死のうがおまえが死のうがナミさんのにゃんこ姿を見られるなら、おれは構わねェ!!」
「おれは構うよっ!!!」
ちっ……。
なかなかしぶてェな、こいつも。
ふんっ!と呆れたように息をつくチョッパーの後ろ姿を見ながら
医務室の天井に向かってふーっと煙草の煙を吐く。
「チョコレートクリームたっぷりのデラックス木苺パフェ」
「……………」
チョッパーの耳が、ぴくりと動く。
「……ふわふわモコモコ、あまぁ〜い綿あめ付き」
「……………」
おずおずと振り返ったチョッパーの顔は、甘いデザートみたいに溶けそうだった。
「…………ちょっとだけなら」
「おしっ!さすがうちの名医だ!!腕ふるってやるから楽しみにしとけ!」
「名医だなんてそんな〜、嬉しくねェぞコノヤロがっ!」
ふん、動物子供は食べ物に弱い。
ちょろいもんだな。
これでナミさんがネコに…………
ネコ…………
いや可愛すぎんだろ!!
ナミさんに耳や尻尾が生えると思うだけで興奮しちまう。
「効果は1日だ。薬が切れた後のことは、おれは知らねェからな!」
「十分さ!ネコになったナミさんを拝めんなら、おれは天国にでも逝っちまう!」
「………はァ」
一人身悶えしながら、さっそくチョッパーにつくらせた薬を手に意気揚々とキッチンに向かった。