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□前編
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side-Nami




「はいナミさん、あったまるよ?」




大きなブランケットに首まですっぽりくるまりながらダイニングで本を読んでいたら、サンジくんが気を効かせてホットココアをいれてくれた。


猫背になって身体を縮めて、肌をなるべく外の冷気に晒さないよう手近に本を抱えていた姿が余程寒そうに映ったのだろう。


まぁよく気がつくのはいつもの彼のこと。
「ありがとう」と呟いてテーブルに本を置いてマグカップを包み込むように手の中におさめると、

冷たい空気が一瞬にしてほわんとした白く温かいものに変わった。





「…………」



「……何?チョッパー、私の顔になんかついてる?」



「いっ、いや!なにも!なにもついてねェ!!」




サンジくんと一緒にダイニングに入ってきて、ひとつ席を空けて隣に座ったチョッパーが先程からチラチラとこちらを伺っているのには気づいていた。


何か壊したのか、黙って蜜柑でも食べたのか………


命知らずな方でもないので前者あたりだろうと思ったが今はいい。

怒れば身体も温まるかもしれないが、なにしろ寒くて極力このふわふわなブランケットから手も足も出したくないのだ。


「…ふーん、ま、いいけど」




訝しく横目で一瞥してから手の中の温かさを胃の中に流し込んだ。







「……なによ?」



「あ…、いや……」



チョッパーが息を呑む音がして、キッチンに立っていたサンジくんの視線まで私に向いていたものだから眉をひそめる。

ココアを飲む私がそんなに珍しいのだろうか。いやそんなはずはない。


理由もなしに穴が空くほど見つめられてはいささか居心地も悪い。




「もう、なんな…………っ?!」




熱々のココアによって身体が温まったからか頭の方も少しばかり燻って

何か文句を言ってやろうとマグカップを少し強めにテーブルに置いたときだった。





「ナミさんっ--!!」


「ナミ----!!」





え?えぇっ?



なになに!?



急に目の前が真っ暗に………



サンジくんとチョッパーの声が遠く聞こえる。






「ナ…、ナミ……?」




すると辺りがゆっくり明るくなって、チョッパーとサンジくんの心配そうな顔が覗いた。



………………いや、待って、




なにかがおかしい……。



あ!そうだそうだ、サイズだ。



サンジくんは私よりおっきいにしろ、

チョッパーは元の姿のまま巨大化なんてしない。



…いやいや、いくらなんでもサンジくんがおっきいにも程がある。






「…………」


「…………」




目の前が暗かったのはどうやらブランケットを頭からかぶってしまっていたからだった。


めくったブランケットの隙間から私を見るなり目を丸くして固まった二人に、なにがなんだかわからなくて何か言おうと口を開いたのに



口をついて出てきたのは人間の言葉ではなかった。














「にゃあ…。


………??」
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