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□愛に飢えた子羊
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恋につきものなのは
焦りと苦悩と疑いと
ただ愛されたいという衝動だ。
「愛に飢えた子羊」
どんな聞き方をすればいいのかなんて露ほどにもわからなかった。
だけど核心をつく言葉は避けなければならないと思った。
そうしなければもしものときに自分だって立ち直れないし、ナミだって困る。
探るように問えば、相手の返事がどうであろうと
あとは自分で都合の良いようにどうとでも解釈できる。
そいつに質問することによってナミとの関係が終わること。それだけが嫌だった。
聞いてしまって後悔するような結果になったとしても
ナミと一緒にいられればひとまず良い。
もしかしたらただのおれの早とちりなんて可能性も大いにあるしな。
とにかくだ、ここ最近の溜まりに溜まったモヤモヤをどうにかしたい。
おれは一人でうじうじ考えたり、悩むのは嫌いなんだ。
「お!なんだー?あんたはナミに惚れてんのか?」
できるだけ爽やかな笑顔で聞いた。
丁度良いタイミング。
冬島の気候海域に寒さを訴えていたナミの身体に、自分のコートをバサッとかけて
自らはいかにも寒そうな格好でナミの隣の席に着いたゾロ。
「見てるこっちが寒い」と呆れ顔のゾロに「仏教面のくせしてナミさんにだけは優しくしやがって」とブツブツ文句を言うサンジ。
そうだ、これなんだ…。
普段寝るか修行で色気のない生活を送り、
物事をアッサリバッサリ切り捨てるクールなゾロが時折見せる柔らかい雰囲気。
女に媚び入るようなタイプではないことなんて、この船にたまにしか乗らないおれにでもわかる。
そのゾロがナミにだけは甘く、心を許しているようにさえ見える。
ゾロがめったに表さない優しさの類。それを向ける相手は決まってナミだ。
「…………だったらどうした?」
ゾロはナミと付き合っているのか。
それがおれの一番の疑念で、その核心を避けての質問が「ゾロはナミを好きなのか」
ただの話の末端を装ったおれの問いに、
ゾロはアッサリ、さも当たり前というように答えた。
そんなことわかりきってる。ゾロがナミに気があるなんて、とっくの昔に気づいてた。
それだけならいいさ。
そんなことを言えばサンジだって、もしかしたらルフィだってそうかもしれないし、クルー以外にもナミに好意を抱く男なんて五万といるだろう。
問題はそこじゃねェんだ--…・。
ナミのことを好きかと聞いて、ゾロが否定するか恥じらいでも見せれば
ゾロのナミに対する「片想い」という都合の良い解釈で片付けることができる。
だが眉ひとつ動かさずおれの目を見てキッパリと認めるという、予想だにしていなかった反応。
ナミを好きなのが当たり前だという返答に、さして驚きもしないクルーたち。
それが何を指すのかなんて愚問もいいところだ。
ゾロとナミの「両想い」他に何がある?
「……いやまァ、別に………へェそうか……」
内心怒りで熱くなりながらも苦笑いをするおれの向かいに座ったナミが
微かに眉を寄せてマズイという表情になった。
…そりゃあマズイよな。
だっておれもナミの恋人なんだから。