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□夜の月には手を振らない
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「どうかしたの?さっきから随分と浮かない顔をしているけど……剣士さんと喧嘩でも?」



「……喧嘩というかまぁ……ちょっとね……」














「夜の月には手を振らない」


















side-Nami







喧嘩の方がまだましだわ。


それだったら理由もわかりきってるし、解決策だってあるでしょ?


だけどあいつは何も言ってくれやしないし、

私には確かめる術がない。


いろいろ巡らせてみても思い当たる節もないから悪い方にばかり考えてしまうの。

どうすればいいのかと、日に日に不安は募るばかり。



こればっかりは、私にだって本当に、ちっともわからないのよ---…・。










「……どうして剣士さんが、あなたのベッドで寝ないのか……?」



「えぇ、そうなの」




まさにその問題のベッドに座る私を、自分のベッドからじっと見つめたロビンは、頬に手を当てて考え込む素振りをしてみせた。



恋人であるはずのゾロはめったに私と一夜を共にしない。

一夜を共にしないと言っても、身体の関係を避けているわけじゃない。

むしろそっちのほうは朝でも昼でも所構わず求めてくる。


ただ単に、一緒のベッドで寝てくれないのだ。文字通り。


ロビンが見張りの日に部屋にやってきても朝まで一緒にいてくれることは珍しく

情事の後、私が眠っている間に男部屋に戻っていき

結局朝はひとり。



別に、ベッドが問題ではないのだろう。

男部屋のハンモックよりは数倍寝心地も良いだろうこのベッドに、なんの不満があるというのか。

もし何か不満でもあるのならば蹴り飛ばすのみだ。



しかし、となると……




「原因は私ということになるのよね」


「あなた?」


「えぇ私」




手を当てた方に僅かに首を傾げたロビンは冷静に聞いてくる。



「例えば、あなたのどんな問題なのかしら?」



例えば……



「一緒に寝ると暑いから……とか……」


これが理由なら全然いい。



「でも、冬の気候でも一緒に寝てはくれないのでしょう?」



そうよ。そうなのよ。

凍えるような冬の朝だって、ゾロは私をひとり置いていく。



「じゃあ…狭いとか、ただ単に人と同じ布団で寝るのが苦手……なわけないわよね」


「ハンモックの方が狭いし、周りに人がいようと寝られる剣士さんだものね」



私に気をつかうでもなく歯に衣着せずにズバリと言うロビン。

そこがいいところなんだけど。





「それじゃあ残る可能性はひとつだわ……」



考えたくないけど……



「身体目当て……ということ?」


「……気持ちいいくらいはっきり言うわね」



それしかないわ。
とため息をつくと、ロビンは私のベッドまで来て、隣に腰を下ろした。
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