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□夜の月には手を振らない
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「航海士さん…あなた、本当に剣士さんが身体目当てだと、そう思うの?」
隣で優しく声をかけてくれるロビンの顔が見られず下を向く。
「だって…それ以外に考えられないわ。やることやって、だけど一緒には寝たくないって、そういうことでしょう?」
そう考えると込み上げてくるのは今まで過ごしたゾロとの楽しい時間。
「付き合い始めた当初からそうだったのかしら?」
仲間になって、わりと早い時期から付き合い始めた私たち。
あの頃はいつもふたりになれるチャンスを探して、
ロビンが仲間になる前はゾロも頻繁に部屋にだって泊まりにきて、朝を迎えるのも同じベッドの中だった。
「……いいえ、よく一緒に寝てたわ。なのに朝起きると居なくなってることが増えて、最近は泊まりに来ないことだってあるわ……」
「夜ふたりでゆっくり会える時間は避けようとするのに、それ以外では身体を求めてくるのね?」
コクリと頷く。考えれば考えるほど、そういうふうにか思えない。
私と一緒にいることに対してもうゾロに、気持ちなどないのだろうか。
目尻にじわりと熱いものがわいてきて顔を伏せると横から優しく抱きしめられる。
「これは私の見解だけど……、私には、身体だけが目的とは思えないわ。
剣士さんは自分の気持ちをあまり表に出すタイプではないけれど、あなたを見つめる彼の眼差しはとても優しく、穏やかよ。身体だけを目的としている相手に、あんなに幸せそうな表情を向けるかしら?」
「………」
「一度ゆっくり話してみてはどう?案外、取るに足らない理由かもしれないわよ?」
「でも……ちゃんと答えてくれるかしら?どうやって切り出したら……」
「部屋に泊まりにきたときに、寝たふりをして彼が出ていこうとしたら捕まえなさい。現行犯なら口を割らないわけにはいかないでしょう?」
「………な、なるほど」
「それでも話そうとしなかったらそのときは………」
「そのときは……?」
「私がたっぷりお仕置きしてあげる……ふふ」
「………」
頭を撫でる優しい手つきとは反対に、目がくすりとも笑っていない。
「が…、がんばって聞き出してみるわ」
「えぇ。今日は長鼻くんが見張りだったわね?私が代わるから、部屋は自由につかっていいわ」
「えっ、そんな、悪いわよ!」
「いいのよ、ちょうど読みたい本があったから。それに善は急げよ?いつまでもひとりで悩むより、早めに白黒つけたほうがすっきりするわ」
「…そうね。ありがとう、ロビンに相談してよかったわ」
「いいえ、私はアドバイスをしただけ。うまくいくことを願っているわ。さ、そろそろ夕飯よ。キッチンに行きましょう」
「うん…あの、ロビン………」
「どうしたの?」
ベッドから立ち上がって出口へ向かうロビンがこちらをふりむく。
「………盗み聞きは、しないでね?」
「…………………………えぇ、当然よ」
ミステリアスな笑顔を私に向けてキッチンへ向かう背中を追う。
なんだというのだ、今の間は。