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□ボーダーラインはミルク多めで
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「じゃあなナミーっ!マルコに喰われねェように気をつけろーい!」





「真似すんじゃねェよい!!」
















「ボーダーラインはミルク多めで」



















side-Nami









「ありがとエース!気をつけるわー!」


「………心配しなくてもガキに興味はねェよい」





眠そうな表情とは裏腹に、よく働く人だと思った。


否、よく人を働かせる人だと思った。




「………こんな絶世の美女を前に失礼しちゃうわ」


「なんだおめェは襲われてェのかよい」


「あいにくおじさんには興味ないの」


「ヘイヘイ、わかったからさっさと手を動かさねェかい」




大きな鯨の端っこでぶんぶんと手を振るエースはメリー号にいるときよりも随分と子供っぽく無邪気な笑顔で、

ルフィの前ではお兄さんでも、歳上のこの人たちの中では弟のような存在なのだろうと、そんな彼の意外な一面に

自分の置かれた状況を一瞬忘れるくらい胸が和んだ。





「はぁ〜、なんでよりによって私が1番隊なのかしら……」


「人手不足なんだから仕方ねェだろい」


わざわざ様子を見に来てくれたエースがあっという間に船内に消えていき、

一気に現実に引き戻された私は手にしていたモップをダンッと甲板に垂直に立てると

偉そうに船縁に座って腕組みをしている鬼監督をくるりと振り返る。



「そもそもルフィの粗相でしょ?なんでか弱い私が一番コキ使われてるわけ?」


「船長の粗相はクルーも連帯責任。雑用は文句言ってねェでいそいそ甲板を掃除しろい」



こうなればもう、敬礼をして心の底からお願いしてみる。



「マルコ隊長!」


「お、なんだい、やっとやる気になったかい?」


「どうか私を2番隊に配属してください」


「……エースに取り入って楽しようって魂胆だろい」


「違うわよ、エースに甘やかしてもらおうって作戦よ」


「同じだろい!!」




ルフィが遊んでいたメリー号の大砲の丸が白髭海賊団の船に直撃したと知ったときは生きた心地がしなかった。




正直、真っ先に突撃してきた青い炎を纏ったこの人が

旋回しながら私たちを見下ろしたときにはウソップと抱き合いながらノジコとゲンさんにお別れの言葉を呟いたくらい。

だけどすぐさまエースか駆けつけてその場を収めてくれ、

クルー全員白髭の船でタダ働きという和解の道を開いてくれたのだ。



「だって元凶のルフィが2番隊ってずるいじゃない!代えてよ!」


「あの弟はエースじゃねェと扱えねェだろい。それに2番隊は人手も足りてるからねい」



ゾロは修行も兼ねてか花剣のビスタがいる5番隊、

ウソップは船の修理のため船大工班、

ロビンは手伝うどころかまんまと書物を読みあさっているようだし

チョッパーはナースたちにマスコットのように扱われ、

いつも鬱陶しいくらい付きまとうサンジくんはコック班を志願した。



「だからって………」



なんで私が、このパイナップル頭の語尾が可笑しなおじさんの下なのよ!



「悪かったねい、若くて優しくて格好いいエース隊長率いる2番隊の配属じゃなくて」


「本当よねー。エースだったらきっと“ナミはそんなことしなくていい!おれがやってやるよ!”とか爽やかな笑顔で言ってくれるんだわ」


「おめェ自分の立場わかってるのかよい!口ばっか動かさねェで手を動かせ!手をっ!」



あんまり怒らせると面倒なのではいはーいと再びモップを手に取って監視されながら床を磨くと



「やればできんじゃねェかい」


なんていう隊長さんの意外に柔らかな声が私の背中に降ってきた。
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