novels2
□ボーダーラインはミルク多めで
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side-Marco
いつもエースに引っ付いている女だと思った。
いや、エースに引っ付く女なんてのはナースや街娘なんかにもたくさんいるけれど、
エース自らも歩み寄る女というのはナミが初めてのように思う。
「おっ!ナミちゃんお疲れ〜!」
「あ、サッチさんお疲れさま」
「大丈夫?いじめられてねェ?マルコは鬼畜だからなァ〜、泣きたくなったらいつでもサッチさんのところへおいで!ベッドの中で癒してあ…ぶェッ!!」
「ようナミ!お疲れさん!マルコにいじめられてねェか?」
昼飯のトレーを持ってナミの向かいに座ろうとしていたサッチの脇腹を蹴ってその場所を奪ったエースは
ナミの言うまさに“爽やかな笑顔”というやつを撒き散らしながら席に着く。
「それが聞いてよエース!マルコ隊長ったら重労働法違反及にコキ使うのよ!ねぇ私も2番隊に入れてくれない?」
ナミにそう言われ、むしろ尻尾を振って寄り付いて行っているのはエースの方ではないかと思うほどの満面の笑みだ。
「やっぱりそうかァ!マルコは鬼畜だからな、よし!ナミも2番隊にこ…」
「勝手に話進めてんじゃねェよい。だいたいなんでおれがいじめるって発想になんだいどいつもこいつも…ナミも否定しろい、甲板のモップがけさせただけだろい」
「エースくぅん!痛ェよっ!つーかおれを無視すんなっ!!」
「おう!いたのかサッチ!」
「いたわ!!今おめェがいる席に座ろうとしてたわっ!!」
ハハハと笑うエースの横におれと向かい合う形で改めて座り直したサッチと目が合う。
「ハァ、色気も何もねェ」
「おれが向かいで悪かったねい。嫌ならナースのとこにでも行ったらどうだい」
「おれはナミちゃんに会いに来たの!」
「あらありがとう、だったら午後の雑務交代してくれない?サッチ隊長」
「くはっ!聞いたか!?“サッチ隊長”だってよ!おれの天使!!いいぜ!甲板磨きでも風呂掃除でも交代して…」
「ナミは“サッチの”じゃねェ!…おれの……お、弟の航海士だ!」
「突っ込むとこはそこじゃねェよいエース」
どう考えても天使というより悪魔と形容するに匹敵する女は
エースのあからさまな牽制にもケラケラ笑って気にしていないご様子だ。
「ナミは食い終わったら書類整理だ。一段落したら休憩取ってやる」
「は〜い隊長ー」
ふてくされたように返事をするナミでさえ、エースはにこにこと見つめている。
船に招き入れてまだ数時間だというのに
おれ以外の隊長たちやクルー、ナースなんかとも既に打ち解けている順応性の高さには感心する。
活発で強気で物怖じしない、まさに海の女というやつだ。
どんな女でもまずは色恋の対象として見てしまうのが男の性で、正直、おれももう少し若かったら……
と思うほどの器量好し。やれば仕事も器用にこなすし頭もキレる。
多少性格に癖があるがそこも可愛がられる要因になるほど魅力的な女であり、
ただ媚びるだけのナースや箱入り娘たちとはまた違う部分にエースが惹かれるのも十分解る。
ただ、
やはりおれとは年齢が離れすぎている。