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□背中合わせの法則
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「フ、フ、フ………フランキーッ!!」




「……………知ってるわ?」




「自己紹介じゃねェッ!くしゃみだッ!!」
















「背中合わせの法則」











「あー……寒ィ…」


「ついさっき、冬島の気候海域に入ったそうよ?」


「だろうなァ……こりゃあ雪が降ってもおかしくねェ気温だ」



見張り台で座ったまま背中同士をピタリとくっつけて、

おれは小娘のオルゴールの修理、ロビンは読書とそれぞれの時間を過ごす。


時折思い出したようにポツポツと言葉を交わしては、また黙りこむ。


後ろにいるロビンの表情は伺えねェが、ペラリ、ペラリとページをめくる音だけが耳に届き、そんなときはおれも自分の作業に集中する。





「ロビーン、見張り交代ー……ってあ、フランキー、どう?直りそう?」



見張りにやってきた小娘が身体に巻き付けた毛布から顔だけ出しておれの手元を覗きこむ。


「問題ねェ、今週のスーパーなおれが完璧に直してやる」


「そ?じゃ、任せたわよ」



立ち上がったロビンにつられておれも立ち上がり、伸びをする。



「それじゃあナミ、昼食ができたら呼ぶわね」

「それまでに直しといてやるぜ」



見張り台を降りようとするおれたちに視線を向けた小娘は、人の悪い笑みを浮かべた。



「あんたたち、相変わらずねー。正面から抱き合った方があたたかいに決まってるのに、何今さら照れてんのよ?」


「おめェなァ………」



船の連中には恥じらいや遠慮なんてもんがねェから、こんな寒い日にはちょくちょく同じようなことを聞かれる。


どんなに雪の降りしきる寒い日でも……いや、寒けりゃ寒ィほど、背中合わせの体勢を崩さねェおれたちを端から見るこいつらにとって

その冷めたような関係が不思議でしょうがないらしい。



「正面だと、本が読めないのよ」

「ふーん……ま、いいけどねぇ」



嫌な顔もせず笑顔で生真面目に答えるロビンとおれを交互に見る小娘


そのニヤつきをどうにかしやがれ。




「それじゃあナミ、よろしくね」

「えぇ、お疲れさまー」







ふたりで見張り台を降りて休憩にキッチンに入るとコックがロビンに温かい茶を淹れ始めた。

おれはもちろんコーラだ。




「てめェこんな日もコーラか。逆に身体冷えちまうだろうよ」

「んァ?おれァこれがいいのよ」


コックは呆れ顔で「へいへいそうかい」と言って湯気の立ちのぼるコップをロビンに渡した。


綺麗に背筋を伸ばし、クールに茶を飲むロビン。






本が読めないからじゃねェ。



背中合わせの本当の理由を、おれァ知ってる……。
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