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□背中合わせの法則
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簡単に言っちまうとおれの身体の前半分は鉄でできてる。

よって正面で抱き合うよりも生身の背中を合わせる方がよっぽどあたたまれるのだ。



背を合わせりゃ空いた両手で互いに好きな作業をしていられるし、気ィつかって無理に会話をしなくても不自然じゃねェから

無言のときも苦にならねェ。


仲間の目を気にしてるっつーわけじゃなく

ふたりのときもロビンは向かい合って身体に触れることをあまりしねェ。



本を読むという体で暖を取る。


船の連中に不思議がられても、説明するのが面倒なのかおれに気ィつかってやがるのか

いつもの笑顔でさらりとかわしてみせるのさ。


暑い日はどうかというと……ただくっついてこなくなるだけだちくしょう!


寒い日にはふらりと寄ってきて、猫背のおれの背を背もたれに本を読みはじめる。

最初のころはせっかく近くにいるんだから自分の方を向かせてェとあれこれ試してみたもんだが

読書の邪魔して手ェ出したりしようもんなら血反吐食うような制裁がお見舞いされる。

前半分の鉄が冷てェのかと理解した今となっちゃ、背中に温もりを感じるのも悪かねェと思う。


安心感つーか、なんかこう、落ち着くんだよなァ……




こうしておれたちの、寒ければ寒いほど背中を密着させて身体を温めるという、「背中合わせの法則」は完成した。










そして今日も今日とて相も変わらず背中合わせのおれらふたり。






「ねぇフランキー」


「んァ……?」



小娘にオルゴールを返した昼食後、することがなくなったおれは女部屋のベッドの上でロビンの背もたれになりながら

そんな今までの経緯を思い返していた。





「どうしてナミが言うように、私があなたと向かい合わせで寄り添わないのか、あなたわかる?」


「はァ……?随分といきなりじゃねェの」



まどろみだしていた頭はスッと覚めて、今さらどうしたのかと顔だけをロビンに向ける。



「あなた、何か勘違いしているようだから」


「……勘違いも何も、背中の方があったけェからだろうよ、おれァ前半分が鉄だからなァ…」


気づいてねェとでも思ったのかァ?と自信満々に答えると

こちらに顔を向けるでもなく、ペラリとページをめくったロビンは抑揚なく言う。



「少し違うわ」


「アン…?そりゃおめェ、どういうこった?」


予想もしてねェ話の展開に眉を寄せ、サングラスを頭にずらすと

本から視線を剥がさねェまま淡々とロビンは紡ぐ。
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