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□裸足の君は物言う花
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両の靴を置いてきた



君はまるで………




















「裸足の君は物言う花」





















side-Zoro










短いワンピースの裾を摘まんでそいつはひらひらと笑って見せた。




店員の「素敵ですよ」なんて月並みな営業文句にもご満悦で、

このまま着ていくなんてとんでもないことを言ったりするから、頭にきて、

試着室から引きずりおろして足も腕も胸も隠れる地味な服を押し付けた。



「は?なんで……?私はこれがいいの!」


「だめだ。てめェにゃこれで十分だろうが」



考えてみれば今日は朝からどうもおれの堪忍袋の緒がチクチクと軋んでいた。


街に出てすぐにナミ目当てのチンピラ共に絡まれ、

飯屋を探していたらキャバクラのキャッチに遭って、

昼飯後にはヌードモデルの勧誘にしつこくつけ回されて

しまいにゃおれの目の前で金をチラつかせてホテルへ誘う野郎まで現れやがった。


そんな不届きものたちを一人残らずぶった斬っていくおれの隣で、当の本人はどこ吹く風。


何が楽しいのか終始ヘラヘラと笑って、周りの男たちの目なんて気にする素振りも見せず

ただでさえ短いスカートを風に揺らしながら無邪気におれの腕を引いていく。




あり得ねェ……。






あまりに無頓着な振る舞いに業を煮やしだした頃、立ち寄った服屋で試着した中の一枚。


ベースの白は光に当たる度ふわりと透けて、中の薄いキャミソールが丸見え。

おまけに胸やくびれや太ももを強調するデザインはどこに目をやっても毒にしかならない。

この期に及んでまだ、男に気を持たせる品行に走るのか。



「だってこっちの方が可愛いし……セクシーでしょ?」



とうに仏の顔なんて捨てていたおれは、ここで初めて鬼の形相と化した。



「……てめェいい加減にしろよ、全然似合わねェ。早く脱げ」


そして今の今まで機嫌が良かったナミは今日ここで初めて息巻いた。


「なにそれ!?あんたの好みなんて知らないわよ!店員、これ買うわ」


「あ?オイ!人の話聞いてんのかよ?!」



財布から取り出した数枚の金をレジに叩きつけたナミの腕を強く引っ張ると、

かんしゃく玉が弾けたみたいに怒気をみなぎらせた顔で力の限りにおれを振りほどいて店の外に駆け出した。



「おいッ!!てめェコラどこ行…」

「お、お客様……!」

「あァ?!」

「財布と……靴を、お忘れです」

「…………」


店員が差し出したナミの財布と試着室の前に揃えて脱いであった靴を手に取り急いで外に出たが



既にナミの姿は見えなくなっていた。
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