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□黄色いくちばしたち
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「起こしたけど、あんた起きなかったじゃない」
とにかく、一刻もはやくこの場をおさめたい一心でナミは憮然と言い放った。
ゾロとナミが恋人同士であることも、ロビンが見張りだった昨夜ゾロとナミが女部屋で一夜を過ごしたことも
クルーたちにとっては周知の事実である。
でも、だからといって大っぴらな態度をとれるはずもなく、風のように過ぎていく2、3のやりとりで済ませてしまいたいというのがナミの本音だ。
「だからって勝手に行くんじゃねェ」
「寂しんぼうか、てめェは」
「あァ?!なんつった!?」
キッチンでふたりのやりとりを聞いていたサンジがパンダのエプロンを脱ぎながら言った言葉に大きな反応を見せたゾロ。
「寂しんぼうか、てめェは」
「そっくりそのまま言ってんじゃねェ!!」
まるで再生されたような同じトーンの台詞にゾロは牙を向ける。
ウソップは着々と席を移動し、話がややこしくなりそうな予感にナミは頭をかかえた。
「束縛野郎は嫌われるぜ?ま、そのときはおれがナミさんをいただくまでだがな」
ねーナミさんと煙草の煙をハートにしたサンジを無視して最後の一口を飲み干したナミはため息をついた。
「どっかのエロ眉毛が朝早くからキッチンにいやがるから心配なんだろうが!!」
「仕方ねェだろ、ナミさんはてめェと目覚めの悪い朝を迎えることよりおれとの優雅なモーニングタイムを選んだのさ」
「あァン?!」
「いい加減にしなさいよふたりとも!殴るわよ!?」
「ナミてめェどういうつもりだ!?おれを差し置いてこんなふざけた野郎と一緒にいるとはよ!」
「ふざけてるだと!?てめェのファッションセンスには負けるぜ腹巻き野郎」
「まぁまぁゾロさん、サンジさんも、落ち着いて、ところでナミさん、パンツ……」
「あんたは黙ってて!」
「「てめェは黙ってろ!!」」
「おやおや、手厳しーッ!!」
「サンジー、飯まだー?」
「あ?あァ、今できた。ちょっと待ってろ」
「そうですよ、こんなときこそ美味しいものでお腹も心も満たしましょう。私、お腹も胸もないんですけど!ヨホホホホ〜!」
ふんっ、と息をついたゾロはクルーによって意識的に空けられているナミの左隣に座る。
誰しもが口を出すのも憚られるこんな状況でもさっぱりおさめてしまうルフィにナミは雀の涙ほどだが感謝した。
「そういえばナミ、おまえ少し顔色悪くないか?」
平和を取り戻したキッチンで始まった朝食の途中、ナミの斜め向かいから心配そうに眉を下げたチョッパーが聞いた。
「そうかしら?どこも具合悪くないけど…」
「このところ天候も不安定だったしなァ、小娘も知らず知らず疲れが溜まってんだろよ」
「まぁそうね、最近はまともに海図や日誌もつける暇がなかったものね」
「それと小娘はやめて」とピシャリとフランキーに言った彼女を、前科も含め心配するチョッパーは釘を指す。
「日誌とかやらなきゃならねェこともたくさんあるだろうけどさ、それでも身体は大事なんだぞ?ナミは女なんだ、あんまり無理しねェでちゃんと寝てくれ。手伝えることがあったらおれも手伝うからさ」
「よく言ったチョッパー、おまえは男だ。そうだぜナミさん、おれらにできることがあったら何でも言ってくれよ」
「そうよナミ、手ならいくらでも貸してあげるから、遠慮なく頼りなさい?」
「いやおまえ文字通りだな…。まぁナミよ、オールマイティーなこの俺様がいるからにゃこの船は安泰だぜ」
「飯食え飯!そうすりゃ治んだろ!」
「アーオ!疲れたときゃ栄養材よりもコーラが効くんだぜ?」
「それはフランキーだけだッ!」
「ヨホホホ〜!私美しい美女のためなら骨身を惜しまずお役に立ちます!あ、身はないんですけどね」
「みんな………」
クルーたちの気遣いと優しさに心底感激して胸が温かくなるナミの隣で何やら思慮深げな顔をしたゾロはおもむろに口を開いた。
「わかった」