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□働く青い鳥
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仕事と私、どっちが大事なの?
そんなの、彼には愚問すぎる。
「働く青い鳥」
私の恋人は正真正銘の大人だ。
年齢だけじゃない。
強くて賢くてクールで
白髭海賊団実質No.2である自分の立場を自覚し、船のため、家族のために日々尽くしている。
冷静沈着で素っ気ないところもあるけれど、
仲間に対して寛容で、教育の一貫として叱咤することこそあれ、
感情に振り回されるような怒り方をしたり、つまらない挑発に乗るようなタイプではない。
私は、そんな大人な彼が大好きだ。
でも……………
「おっ…?ナミ?ナミじゃねェか!!」
「エース!久しぶり!元気にしてた?」
背の高い船の上から身軽にジャンプして地上に降り立った我らが麦わら海賊団船長の兄エースは、ガバリッ!と私の身体に腕を回す。
「元気じゃねェ!ナミと逢えなくて、おれもうだめだった!!」
子供みたいに無邪気に瞳を輝かせて抱きついてくるこの人は、ちなみに言うと私の恋人ではない。
「おめェは常時鬱陶しいくらい元気だったじゃねェかよい」
「マルコ!」
トンッと足を鳴らしてエースにぎゅうぎゅう締め付けられる私の目の前に着地したこの人こそ、私の恋人。
白髭海賊団1番隊隊長、不死鳥マルコだ。
「久しぶりだねぃナミ、元気そうで何よりだよい」
「えぇ、マルコも!」
エースの肩からはみ出す私の頭に大きな手をポンと乗せたマルコは、相変わらず穏やかな大人の表情を見せる。
「はぁぁー、何ヵ月ぶりだ?おまえ、また体つきエロくなったなァ!」
「あんたそれ屈託ない笑顔で言うことじゃないわよ!どういうしつけしてんの!?マルコ」
「すまないねぃ、後でちゃんと言って聞かせとくよい」
「おわっ?!」
エースの服を掴んで私の身体から引き剥がしたマルコは、彼女に対するこんなセクハラまがいな発言にだって穏やかに笑っている。
「あー…ナミ、せっかく朝早くから来てもらって悪いんだが、今日はこれから1番隊総出の買い出しで、その後傘下の連中を迎えに行かなきゃならねェから、夜まで相手してやれねェんだよい……」
「そうなんだ……仕方ないわよ。急に来ちゃったし、マルコは隊長で忙しいんだから」
「悪いねぃ、夜は泊まってくだろい?コックに飯出すように言っておくから、おれの部屋を自由に使っとくといいよい」
申し訳なさそうに気をつかってくれるマルコの言葉に甘えて久々にモビーディック号に泊まらせてもらうことにした。
マルコは忙しい。ただでさえ隊長で、面倒見のいいマルコにはクルーたちも皆頼りきりで、息つく暇もない。
そんな中、恋人である私との時間もとってくれているのだから、文句は言えない。
少し寂しいけど、
私はマルコの、仕事を決してないがしろにしないところや仲間想いなところが好きなのだ。
「ナミいるかー?」
昼過ぎ、マルコの部屋でのんびりくつろいでいたらエースが訪ねてきた。
「どうしたの?」
「せっかくの島なのにずっと船ん中いても暇だろ?これから出かけようぜ!コックに言って晩飯弁当にしてもらったんだ、気分転換に外で食おう!」
二人ぶんのお弁当を持って出かける気満々のエースは有無を言わさず私の手をぐいぐい引っ張り外に連れ出した。