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□働く青い鳥
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「あんた隊長の仕事は?」
「ん?午前で終わり」
賑わう街をエースとふたりで歩く。
マルコはそろそろ買い出しも済ませて傘下の海賊たちの迎えに行っている頃だろうか。
「隊長のくせにマルコと違って暇なのね」
「ナミが来てるから無理やり暇にしたんだって!」
へぇそうなの、と周りのお店を見渡しながら歩いていると唐突に右手に温もりが降ってきた。
「………この手は何?」
「ん?おれの左手」
「違うッ!そういうことを聞いてるんじゃなくて!何で繋いでんのか聞いてんの!」
しかも恋人繋ぎ!
「別にいいだろ?デートなんだから」
「誰もデートだなんて…」
「マルコに許可取ったぞ?」
「え……?」
きょとんとしてエースを見上げるとニカッと笑った顔が私を見ていた。
「ナミとデートしてきていいかって聞いたら、仕事終わらせてからなら好きにしろって」
「それだけ?」
「あーあと、怪我させんなってさ」
「…………」
ふーんそう、そうよね、私が他の男とデートしてたってなんとも思わないんだわ。
大人だもんね、マルコは。
心ここにあらずな私の様子に気づいたエースは握った手をぐっと自分の方に引き寄せた。
「おまえ、ほんとにいいのかよ?」
「………なにがよ」
食い入るように見つめられて目を逸らす。エースの言いたいことは、なんとなくわかる。
「おれ、マルコに言ったんだぜ?せっかくナミが来てんだから、仕事なんて1番隊の連中にでも預けてもっと時間とってやればって。そしたらあいつ、ナミより仕事の方が優先だって」
「…………」
「なぁナミ………」
前を見据える私の身体を自分の方に向かせて肩に手を置いたエースはしっかりと目線を合わせてきた。
「おれにしろよ」
「エース………」
「おれならナミにそんな顔させねェ」
切ない表情でそう言って私の髪を撫でるエースがいつもより少し大人に見えてどきりとする。
いつも以上に真っ直ぐ伝わってくる想いに胸がきゅんとなる。
だけど……
「私が好きになったのは、そういうマルコだから……」
うつむいて言った言葉は本心だ。
エースは小さく息を吐くと私の頭に手を置いた。
「まァ……辛くなったらいつでも来いよ。おれはずっとおまえの傍にいてやるから。な?」
「エース……ありがと……」
くしゃっと髪をかき混ぜて笑ったエースと共にまた手を繋いで街を歩く。
はしゃぎ回る彼は純粋な子供みたいで、
その笑顔を見ていると一時は嫌なことさえ忘れて自然と笑顔になれた。
「お、マルコ、帰ってたのか」
「あァ、今着いたとこだよい」
岡の上でお弁当を食べてしばらくくだらない話で盛り上がっていたら、帰る頃には随分と夜が深まっていた。
「ありがとエース」
「じゃあなナミ。今日はすげー楽しかった!また明日!」
マルコの部屋まで送ってくれたエースにお礼を言うと私の頬っぺたにチュッとキスをして、満面の笑みで去っていった。
「……疲れただろ?風呂にでも入ってきたらどうだい?デカくて良けりゃ服はおれのを使うといい」
「………えぇ、ありがとう」
見ていたはずのエースのキスをスルーしたマルコはバスタオルや着替えを私の手に持たせた。
頬っぺにキスくらいで動揺しないところ、やっぱり少し冷めている。