過去拍手御礼novels

□探しもの
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「やめんかっ!」


「……ったァ!なんでだよ!!?」



手の甲に口づけをしようとしたルフィを手加減なしでひっぱたいた。

真っ赤になったほっぺたをすりすりしながらむくれるルフィの目の前で仁王立ちする私。



「ふざけてんじゃないわよ!」

「ふざけてねェ!サンジのマネだ!」

「それがふざけてるって言ってんの!!」


こんな怒鳴り声をあげたって気にする者は一人もいない甲板のど真ん中。

騒がしいのは日常茶飯事。



「サンジのマネすんのがなんでダメなんだよ!」

「サンジくんのマネがダメなんじゃないわよ!そういうことをするのがダメだって言ってんの!!」

「そういうことってどういうことだよ!?」

「手とか髪にキスしたり、いきなり触ったりすることよ!」



最近のルフィはおかしい。

おかしいのはいつものことなのだが、近頃はもっぱら「サンジのマネー」などと言って

いたるところにキスしてきたり、見よう見まねの紳士っぽい仕草をしてきたりする。

しかも見つめてくる眼差しや触れてくる手つきまでやたらとサンジくんに似せてくるものだから、

普段考えられない言動についドキリとしてしまう。

ちなみに私は別にサンジくんが好きなわけではない。




「なんでそういうことしたらダメなんだ?」


「なんでって…………」



あれ……?なんでだろう。



「サンジはよくって、なんでおれはやっちゃいけねェんだ?」


「……なんでかしら?」


「おれに聞くなよ」



確かに、サンジくんのそういう行動は度を過ぎなければ別にいい。

いつものことだ。

だけどなんか、ルフィにされると……




「……サンジくんと違って、あんたのそういうことには慣れてないからじゃない?」


腰を落として膝を抱え、正面であぐらをかくルフィと同じ目線で向かい合う。



「じゃあ慣れたらいいのか?」


うーん…………



「なんかそれも違うわ」


「じゃあなにがダメなんだよ?」



ぶすぅっと唇を尖らせるルフィ。


そんなにサンジくんのマネがしたいのだろうか。しかもいっつもいっつも私相手。



「じゃあルフィは、なんでロビンにはサンジくんのマネしないのに、私にだけするのよ?」


私の質問返しを受けて空を仰いだルフィはポツリ、と呟いた。



「……なんでだ?」


「私に聞かないでよ」



再び顔を合わせ、私は首を傾げ、それとは反対側にルフィも顔を傾ける。




「……なんでか知んねェけど、サンジみてェなことは、ナミにしかしたくなんねェんだよなァ」


「私も、サンジくんにされたってちっとも恥ずかしくなんかないわ……」




ん?


恥ずかしい?


そうだ、ルフィからされると照れくさいのだ。





ふたり、傾けた顔をゆっくりと元に戻す。






「これってよ、なんかおれ、わかった気がするぞ……」



「……私も、なんとなく……なんでかわかったかも……」






互いに意識し合うこの状況、


無頓着なふたりの、無自覚で、無意識で、鈍感で、純粋な想い合い……






つまり、これって…………







「「好きだから………?」」










恋心、見つけた!












「…………ん?今ナミさんがおれを呼んだ?」
「気のせいよ、サンジ」
「そうかい?ところでロビンちゃんいいことでもあった?さっきから嬉しそうだね」
「えぇ、やっと見つけたの」
「何をだい?」
「探しものよ……ふふ」









END

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