過去拍手御礼novels

□操り人形
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「…………どけ」


「イヤよ。あんたが私の言うこと聞くまで、どかない」


「………………」



おれは犬じゃねェんだぞ。



と、上に跨がる女を睨み上げたら、

「その目は何?」と逆に睨み返された。



「……荷物持ちならエロコックにでも頼め」


「イヤよ。サンジくんがいたらうるさいでしょ?落ち着いて買い物できないもの」


「だったらてめェひとりで行きゃいいだろ」


寝起きの不機嫌な声でそう言うと、

ナミはおれの腹巻きをぎゅっと握って、ゆさゆさと身体を上下しながらだだをこね始めた。



「イーヤっ!今日はたくさん買う予定なのー!こういうときに役立てないでいつ役立つってのよ、あんたのそのバカみたいな筋肉!」


「なっ!バカは余……っ」


おれはここでようやく気がついた。

おまえの乗っている、そこ……



「早くしないとイイ物が逃げちゃうでしょ!」


「逃げるかッ!つーか、……」



まてまてまてまてまてまて

そこでそんなに揺れんな。

刺激されちまうだろ……!



「もう、早くしてよ!」


「早くしてよっておまえ…」


はーやーくーとおれの上で揺れるナミに、敏感な部分がむくむくと固くなっていく。



「おいっ……どけろ……」


「やだって言ってるでしょ!」


ふくれながら逆にずしりと腰に重みをかけられ、うっと喉の奥で唸る。

その腰を掴んで突き上げてしまいそうな自分の手を、

間一髪のところでおさえた。



「……いいからどけろ。昼寝の邪魔すんな」


「するわよ!展望台いたってまともに船番なんてしないじゃない!」


ナミが前のめりになって服の襟に掴みかかる。

その衝撃でおれのものにぐっとめり込む、服越しの……



「だァァァッ!いいから降りろ!とりあえずてめェはそこから降りろ!!」


「……何急に大声出してんのよ」


眉を寄せて怪訝な顔でおれを見るナミ。

下から見上げるおれの目に欲が宿っていることも知らないで、

自分がその欲を掻き立てていることも知らないで、

動く度に短いスカートが細い足の上を滑って中身が見えそうになる。

この体勢と上下するその動きに、こいつが騎乗位で乱れるところを想像してしまい

おれはそんなやましい考えを振り払うように無理矢理顔を逸らした。



「……男が誰でもコックみてェに言うこと聞くと思ったら大間違いだ」


「あんたがおかしいのよ!こんなキュート美人のお願い事を喜ばないなんて!……借金増やすわよ?」


「お願い事じゃなくて脅迫だろッ!」


「細かいこと気にしないの」と身体を起き上がらせたナミ。

もぞもぞと擦れる衣の音さえおれの欲望を刺激して

そこに感じるナミの体温に気がどうにかなりそうで、

少し強めに突き放す。



「いい加減にしろ。……今すぐどかねェと、本気で怒るぞ……」


今すぐどかねェと、本気で襲っちまう。

だから早く……



「…………ねぇ、あんたはさ、」


「あ……?」


自分の真下で狼が空腹を我慢しているとも知らないで、

ナミはなんとも悠長におれの腹に頬杖をついた。




「……いつになったらサンジくんみたいに、従順になるのかしら?私に……」



つまらなそうにそう言いながら、ナミはおれの胸にすーっと人差し指を這わす。

素肌への刺激に身体の芯をずくりと掻き乱されたおれは

これ以上の揺さぶりを遮るようにナミの手を掴んだ。


「……ふざけんな。おれはあいつみてェに、おまえの犬にはならねェぞ」


「何言ってんの、犬は一匹で十分だわ」


「だったらおれがおまえの言うこと聞く必要はねェ」


おれの苛立ちにも顔色ひとつ変えずに手を振りほどいたナミは

両手で頬杖をしてじっと見つめてくる。

その腕の間から大きく胸元が見えていて、おれの視線は意に反してそちらに向く。


「犬は犬、マリモはマリモよ」


「……茶化してんじゃねェ」


「犬になつかれすぎてベタベタされるのも面倒だわ。だからこれからは、あんたが私に尽くしなさいよ」


にこりと微笑みながら上から目線の命令を下すその女。



「……なんでおれが。……おれはてめェの男じゃねェんだぞ」


ナミの口元がゆっくり持ち上がるのが、視界の隅に入ってきた。



「あら、私の男になったら従順になるっていうの?」



からかわれている。

そうわかっていても、ナミが垂らした細い糸にまんまと食い付くおれは

結局のところ、こいつの思う壺かもしれない。




「……試してみるか?おまえの男になったおれが、忠実になるかどうか……」



浮かべた笑みをさらに濃くしたナミは、わざとらしく考える素振りをしてみせた。


「どうしようかしら」


「………………」



試せ、試せよ。



「あの犬よりも忠実になれるの?あんた」


「………………」



やっぱりこいつはおれのこともただの犬にしたいのかもしれない。

そう考えると騙されてやるのも癪で、おれは小さく息を吐き目を閉じた。



「……コックより従順に?んなのできるわけねェだろ。くだらねェ」


「あら……」


冷たく言ったおれの襟に手を伸ばしたナミは、

そこを支えにして、あろうことか再び腰を深く埋めてきた。



「っ、……やめろっ……」


咄嗟に目を開けるとはだけた胸元から覗く谷間がおれの身体に密着していて、

その上では悪戯な笑みを浮かべる女の顔。




「こっちは従順なのにね?」


「……ッ!!」



「さっきから、ずーっと元気じゃない」と言い、

服の襟から手を入れその綺麗な指で脇腹をなぞる女に全身の毛穴が開く。



「てめッ……!わざとか……ッ!!」


「どうかしら?」


僅かに腰を擦り付けられ、思わず「ぅ……」と息を吐きぴくりと欲を示すおれの反応を楽しむように

ナミは色のついた誘惑の視線を向けてくる。



「素直に尽くすなら、私の男にしてあげてもいいわよ?」


「………………」


脇腹からゆっくりと上がってきた手が首にあてがわれ、

ぐっと迫ったナミがおれの耳元で妖しく囁いた。





「ねぇ…………どうする?」



「……っ!」



瞬間耐えきれなくなったおれはナミの腰をがしりと掴み、自分の欲を下から思い切り押し付ける。



「っ、ちょっと、……そんなに余裕ないわけ?」


「……おまえの、せいだろっ」


一度感じてしまった刺激に歯止めが効かなくなったおれは

スカートを巻き上げナミの尻を押さえるように揉みしだきながら

止めることなく腰を揺らす。


「や、……ちょっと待ちなさいよ!」


「は、ナミっ……このまま、挿れさせろ……」


ゆるゆると腰を動かしながら片手でナミの身体を抱きしめ、

尻を撫でていた手をTシャツの裾に侵入させると

ナミは制止するようにその手を掴んだ。





「まだ、聞いてないわ?」


「………………」


「買い物に……行く?」



私と。



にこりと笑うナミに、余裕のないおれは熱い息を吐きながら呟く。




「…………行く。行ってやる」


「する?…………荷物持ち」


「っ、するっ、してやる!してやるからっ……!!」


切羽詰まって首を縦に振るおれに

ナミは猫のように意地悪な目をして身体を擦り付けてくる。




「じゃあほら、言いなさい?……“なんでも言うこと聞きます”……って」


「っ、てめ……!」


「あら、別にいいのよ?私は。犬でも我慢できるもの?けど、あんたの方はどうかしら?」


「うあっ……」


立てた舌で首筋をぺろりと舐められ、たまらず柔らかい身体にぎゅっとしがみついて

止まりそうにない欲を下から突き上げるおれに

ナミは耳たぶを甘噛みながら囁く。



「ほら、…………言って…?」



能を溶かす悩ましげな声に、不本意ながら選択肢なんてものはなくて……

手玉に取られたおれは、とりもなおさず器用なその手の上でころころと献身的に走り回るのか。




本能にも、こいつにも、忠実に。




「てめェ……いつか地獄に…」



「誰が……どこに、堕ちるって……?」




黙らせるように、いやらしく揺れるおれの腰を撫でたナミに、苦笑する。



おれが、おまえにーー−−



悔し紛れに生意気なそいつの肩に歯を立てたおれは、

一気に捲りあげた服の裾から豊かな胸に手を這わせ、囁いた。







「従順な……おまえの男に、なってやる…………」







その言葉を聞いたナミはにこりと満足げに微笑み、

よくできましたと言わんばかりに

とっくに熱くなっていたおれの唇にキスを落とした。





あぁ……


さしずめおれは、


見えない糸に踊らされる


愚かな操り人形。


この唇の思うがまま、









おまえの言いなり
















「さ、次の店行くわよ!」
「どんだけ買う気だッ!!」
「いいから黙って持つ!ほらほら置いてくわよー?」
「てんめェ……」








END

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