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□心の扉
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「この島の娯楽はもう遊びつくしたえ。おまえたち、新しいモノを用意するんだえ」


「では島外の珍しい娯楽を調達させましょう」


「うーん、ワノ国の舞妓という芸能者、あれが見たいえ。呼び寄せるんだえ」


「し、しかしワノ国は鎖国国家で…」


「わしは天竜人だえ。つべこべ言わずに早く使いをやらんか!」


短く返事をしたスーツの男はでんでん虫を手にした。


「天竜人ね……」


周りの人間に倣ってベンチからおり、ひざまづく。

ついさっき、なんの抵抗もない奴隷が世界貴族に銃で打たれるのを見た。

ここではこの世界貴族に逆らうととんでもないことになるという話を、小耳に挟んだ。

人を飼う……なんて、あの外道な海賊となんら変わりないじゃない。

ただ特別な血筋というだけで、どうしてこんな横暴な振る舞いが許されるのだろう。

私なんて生まれも育ちもひどいもんよ。

戦争孤児生まれの奴隷育ち、おまけに今では立派に札付きの海賊やってるわ。

だけどね、愛情だけはこの身にしみるほど受けて、けっこう幸せにやってんの。

私には、命をかけて戦い、守ってくれる人たちが、たくさんいるから。


そう思うと、激しかった動悸も少しおさまって、私は深呼吸をしながら地面を見つめた。


「パパー!ママー!早くー!観覧…」


「ん?なんだえ?このガキは……」


先程の女の子が、天竜人に正面からぶつかって、周囲は緊張に包まれた。


「もっ、申し訳ございませんっ!!」

「どうかお許しを!!」


両親が地面に擦れるほど頭を下げているのを横目で見て、天竜人は忌々しそうに鼻を鳴らした。


「このわしにぶつかってくるとは、どういうしつけをしとるんだ」

「すみませんっ!!よく叱っておきますので!!」

「子供だからと甘やかすんじゃない。死をもって償うといいえ」


怯える子供に銃口が向く光景を目の当たりにして、私の身体は勝手に動いた。



「ちょっと!!!なんの罪もない子供に物騒なもの向けないで!!!」



やっちゃった。

ついさっきまで、ルフィたちが天竜人ともめ事おこしてなきゃいいけど……なんてロビンと頭を抱えていたのに、

カッとなったら止められないのは私の方みたい。

だけど、後悔しても後の祭り。

あとは、どうやって逃げるか考えなきゃ。


「……おまえ、島のもんかえ?」


すぐに私へ銃口が向くと思っていたのに、ゆっくり目の前まで歩いてきた天竜人は突然そんなことを聞いてきた。


「……ち、違うけど、だ、だったらなんだって、いう……んですか……?」

「まぁどっちでもいい。女、わしの妻になれ」

「では、手続きを」

「は、はああああっ!!?」


視界の端で両親が女の子を抱えていくのが見えたが安心している場合でもなかった。

妻ってなに!?こいつ頭おかしいの!?


「ちょうど健康的で若い女を妻に欲しいと思ってたんだえ」

「ちょ、ちょっと!嫌よ!あんたなんか…!」

思わず本音を漏らすと天竜人はあからさまに眉をひそめ、スーツの男に命令した。


「じゃあ奴隷にするえ。首輪をつけて連れてこい」


う、うそでしょ……!!


「やっ…!やだ!!放して!!誰か、助けてっ、」


「大人しくしろ!」


スーツの男たちに羽交い締めにされ、大きな鉄の塊が近づいてくる。

あの首輪をはめられたが最後、一生人に仕えて生きていくことになる。

逃げたり、無理矢理はずそうとすると爆発する奴隷の首輪……



「っ、いや……ルフィ…!ルフィ……っ!!!」


「口を閉じればイイ女だが、少しうるさいえ……」




バァァンッーー−−




鋭い痛みが肩を貫いて、私の意識はそこで途切れた。
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