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□最強の恋敵
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「なぁなぁサンジ〜」
「あ?どうしたルフィ」
騒動が去った後の穏やかな昼下がり、
男二人の決して優雅とは言えない空間から浮かんだ船長の一言から
それは始まった。
「最強の恋敵」
ゴム人間率いるこの海賊船を朝からクソでけェ海王類が襲ってきて、
ゆっくり朝食をとる暇もなく斬ったり蹴ったりして退治していた俺ら戦闘員。
この底なしの胃袋…
もとい文字通りゴムの胃袋を持つ船長の3割増しの空腹を満たし終わり、
ようやくキッチンが静かになった頃合いを見計らって
我が海賊団の華である麗しのレディ達へのティータイムを鮮やかに彩るであろう愛のフルーツタルトを切り分けていると
机に突っ伏して顔だけをこちらに向けた気だるそうなルフィがおもむろに訊ねてきた。
「サンジの一番ってなんだ?」
「……は?」
いくら朝から戦闘に駆り出されて万にひとつ疲れていたとしてもだ、
胃袋と同じく底知れぬ体力と好奇心を持て余しているこいつが
こんな晴れた昼間に鼻やタヌキと遊ばずに大人しくキッチンの椅子に座っている。
というだけでも珍しいというのに…
「らしくねェ質問じゃねェか。
さっきの戦闘で頭でも打ったか?」
「失敬だぞお前!」
ぶすっと唇を尖らせ子供じみた顔になるそいつをカウンター越しに眺め、
どうしたもんかと…。
「……一番って言われてもだな、
漠然としすぎてて答えようがねェ。
例えば好きな食べ物とか、好きな色とか、ジャンル指定があれば答えられるんだが?」
「てことはよー、
やっぱり“一番”てのは“好き”ってことなのか?」
「あァ……まぁ一番嫌いってのもあるが…、さっきのてめェの聞き方だと一番好きって意味にとれるんじゃねェか?」
俺の話を大人しく聞いていたルフィはパッと顔をあげて嫌に真面目な顔になった。
「……おれはよー、仲間ってのに一番も二番もねェんだ」