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□この気持ちに居場所を
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恩を着せたいわけじゃないのさ。




ただ君を守りたいというこの気持ち…




この気持ちに居場所を与えて欲しいだけ。







「この気持ちに居場所を」









闇から解放されたこの時を喜ぶ人々。


太陽が昇っても止むことのない宴。



コックの俺は海賊たちの食欲を満たすため手を休めることなく働き通し。



影が戻ったとか

新しい仲間が加わったとか

あの鯨の仲間が生きてたとか
…いや1回は死んでるんだったか?


…まぁとにかくめでてぇことはたくさんあるんだが、


飲めや歌えの大騒ぎの中、
時折浮かない顔を見せるレディがひとり。








出来立ての酒の肴を野郎共に運び終えた後、



身体中包帯だらけで死んだように眠るそいつの側を

片時も離れない彼女にドリンクをお持ちする。



「ナミさん、マリモのことなら俺が看てるから、あっちで飯でも食ってきたらどうだい?」


マリモを挟んで向かいに座り声をかけると
困ったような顔で笑ってドリンクを受け取ったナミさんが言った。


「ありがとサンジくん。だけど、もうちょっとここにいるわ」


「…そうか。じゃあ何か軽く見繕ってくるから待ってて?」

頷いた彼女を後に宴会の中心に歩き出す。





俺が血だらけのあいつを抱えて戻ってきてからというもの、

ナミさんはひどく心配そうな顔で

チョッパーに手当てを受けて眠っているゾロに付き添っている。



そりゃあ
あの七武海の魔の手から逃れたはずの俺たちの中で


体力と回復力だけが取り柄の筋肉バカが
ただ一人重傷なのはどう考えても不自然だ。


ナミさんは俺に事情を聞こうとはしない代わりに


ぴくりとも動かないそいつの傍らで

もう何度目になるかもわからない溜め息をついた。




心配なのは誰だって同じさ。

傷ついてほしくねぇ

仲間なんだ、当然だろう?



だけど今にも泣き出しそうなその潤んだ瞳や


生気のない頬に優しく触れるその指先は






仲間のあいつに向けられたもの?




それとも……
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