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□主治医の指示は絶対だ
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海賊にだって義理はあるし
なんだかここはとても居心地がいい。
だけどその男の側に無造作に置かれた大きな刀を見ていると
あぁ、はやくあいつのとこに戻らなきゃ…
そう思ったの。
「主治医の指示は絶対だ」
顔が割れている以上嘘やはったりは通用しない
泣き落としも効かない
もちろんお金で解決できるような問題でもない。
よりにもよってクリマタクトはウソップ工場で修理中。
治安がいいと踏んでいたこの島、
裏を返せば海軍の目が行き届いているということだ。
単独行動の他の奴等は大丈夫かしら?
……ううん、きっとこんなふうに捕まるのは私とウソップくらいよね。
「はったりに嘘泣きと何度も惑わしやがって…いい加減観念しろ泥棒猫!」
「麦わらを誘き寄せるのに丁度良い材料だからな。殺しはしない」
銃を持った精鋭たちが
たったひとりのキュート美人にいったい何人がかりなのかしら?
「はいはいお手上げよ。あいつらと違って普通の人間だもの。武器もないのに銃を向けられちゃ成す術なしだわ。
…それよりお兄さん」
こうなったら最後の手段よ。
「逃げ回って疲れちゃったの。ちょっと休憩していかない?」
「なにをふざけたことを言っている!お前は今から中将のところに…」
「暑いし、汗をかいた服を着替えたいの。ね?」
上目遣いで首を傾げると
前列で銃をかまえていた海軍が息を呑んで顔を見合わせた。
色仕掛けで隙をつくって逃げるしかない。
これくらいのピンチ、ひとりで乗りきらなきゃ…
あいつらに守られてばかりだった2年前とはもう違うのよ。
「…ちょっとだけだぞ」
「軍曹、しかし中将が…」
「すぐに終わらせれば大丈夫だろ」
「…確かにこんなに良い女めったにお目にかかれねぇしな」
「俺、手配書見たときからタイプだったんだよなぁ」
にやけ顔の男共に虫酸が走る。
だけど雑念渦巻く男の隙は容易くつけるのを知っている。
「あの路地に使われていない廃屋がある。時間はかけない急ぐぞ」
「「はっ!」」
軍曹と呼ばれた男に肩を抱かれて路地へと連れて行かれる。
全部で8人
上手く隙をつけば振り払えない人数じゃないわ。
頭の中で船までの逃亡経路をシュミレーションしていると
突然鈍い衝撃がはしって
身体が地面に叩き付けられた。
「……っ!」
「麦わらの一味を追い続けてきた俺たちの部隊はな、
お前の騙しのスタイルも熟知している。
隙をついて逃げるつもりだったのだろうがそうはいかん。海軍を甘くみるな」
すぐさま手足が拘束され
何人もの男の身体が覆い被さってきた。