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□神に赦しを請う前に
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見たいの。
あなたの胸の中の
真っ赤な激情を。
「神に赦しを請う前に」
「お前、明日は?」
筋肉質なゾロの腕は情事後であるからか私の首の下と腰にだらしなく置かれ、
向かい合った瞳はいつもの鋭いものではなく心なしかトロンとしているようにも見える。
「サンジくんと買い物」
問われた質問に何の気ないふりをして答えると
「ふーん」とこれまた素っ気ない返事が返ってきた。
明日着く島での過ごし方、私の予定に興味は持っても男と二人で過ごすことに関してはさほど気にしていないようだ。
「あんたは?」
「俺は別に…陸に用事もねぇし船番で構わねぇ」
同じトーンで「ふーん」と返すと
腰に置かれていた腕が首までのぼってきて
眠そうだった瞳に若干の光が灯る。
「んなことよりナミ……もっかいシてぇ」
太い親指が私の唇を押し確かめてそこに合わせるようにゾロの唇が近づいてくる。
「……疲れてるの。今日は寝ましょう?」
別に疲れているわけでもない貴重な逢瀬の時間だが、これは私の小さな抵抗。
“あいつなんかより俺の側にいろ”
その一言が聞きたくて、今まで何度小芝居をうっただろう。
この男にとっては明日私がどこで誰と何をしようが
そんなことより今ここで身体を重ねて快感に溺れることのほうが大事なのだろう。
「……あぁ、わかった」
半分馬乗りになりかけていたゾロが無表情で私の横に身体を戻し、
いつもみたく優しく頭を撫でてくれたから
おやすみを言って静かに目を閉じた。
サンジくんと二人の時間は日に日に増えるばかりなのに
あんたはいつもその真横を無関心に通り過ぎてく。
その胸の中の嫉妬心はどうしたら顔を出す?
それとも端からそんなもの
持ち合わせていないのかしら?
私を守るように抱く腕に
身体中から伝わる温もりに
心地よい脈拍の音色に
幸せでないと言ったら嘘になる。
だけど物足りなさを感じるのも事実。
深い青の海もいいけれど
私はあなたの真っ赤な熱を感じたい。