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□甘い痺れにご注意を
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可愛いからって甘くみてはいけないよ?

なつっこい笑顔にも油断は禁物。


その瞳に誘われて


吸い込まれるように触れたら最後。



柔らかいその指先の


鋭い爪にやられちゃう。









「甘い痺れにご注意を」








なんだかピリっとする…。



初めて彼女に触れた瞬間、俺の脳が危険信号を察知した。






「…いいの?」


「…酔ってるとこを襲うなんて卑怯」


「誘ってきたのはナミさんだろう?」


「後悔するわよ?」


「それでもいい。俺はナミさんが欲しい」







酔いの回った彼女を部屋まで送ろうとキッチンを出ると

潤んだ瞳で見つめて倒れかかるように抱きついてきた。


咄嗟に受け止めると甘い香りとほのかな色気を醸し出して
俺の唇に静かに触れたナミさん。


アクアリウムバーへ運んで押し倒して許可を取ろうと口を開くと

自ら誘ってきたくせに卑怯だなんて言うから


NOと言われて引き下がるような紳士な気持ちなんてこれっぽっちもなくなった。



その瞳に誘われるように口付けると



全身をピリっとした電気が駆け抜けて



やめておけ


これ以上、この女性に触れてはいけない



そう頭が警告したが

次の瞬間には彼女の手が俺の背中を這い回って


理性なんて糸も簡単に吹き飛ばされて



その唇から、指先から、声から、肌から発せられる

微弱な電流を俺の体に繋いでいた。







案の定、触れてはいけない女性だった。


あの夜からまるでその存在が磁石であるかのように

絶えず俺を引き寄せるくせに


近づいていくと体を反転させてするりとこの腕をすり抜ける。



何度も何度も捕まえようと手を伸ばすけど


その度にあの夜の彼女は遠ざかり、その心に触れることを許さない。




だけど一度知ってしまった甘い痺れは俺のハートを支配して


気づけば電気を辿って彼女に行き着く。







「参ったな……」


どうすれば彼女をこの手の中に留めることができるのだろう。


甲板で繰り広げられる賑やかないつもの風景を横目に


広い海に向かってやるせない気持ちと共に煙草の煙を吐き出した。
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