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□Everybody, smile!
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あなたの笑顔を見ていると、



胸がじんわり温かくなるのです。






あ、私、胸無いんですけど……。










「Everybody, smile!」








私が麦わら海賊団の一員になって、一週間が経ったころでしょうか。


こんな出来事があったのです。







「あ、ねぇブルック、サンジくん知らない?」



フランキーさんに頼まれたコーラを調達するためにキッチンに入ったところ、

航海士のナミさんが蜜柑をいっぱいに入れた籠を傍らに私に訊ねてきました。



「サンジさんなら今日の夕食を思案するとかで、ルフィさんたちが釣ったお魚さんを見にアクアリウムバーに行きましたよ?」


「そうなんだー、入れ違い…か。それじゃあここで待つとしますか」


籠をキッチンの隅に置いて手際よくティーカップを用意し、

私の分まで紅茶を淹れて座るよう促してくれるナミさん。


なんと気が利くお嬢さんなのでしょう。


「これはありがとうございます。あ、ついでにパンツ…」

「見せるかぁっ!!」

「ヨホホホ、手厳しーっ!!」



勢いよく飛んできた鉄拳は、肉なんてついていないはずの私の頭にたん瘤をつくるのです。

ゴムであるルフィさんがナミさんの拳骨を痛がるのは、

その拳に愛がこもっている証拠なのでしょう。あ、今の私に対する鉄拳も然りかと…。




「ところでナミさん、サンジさんに何か用事だったのですか?」


美味しい紅茶ををすすりながら訊ねると、あぁと思い出したように



「蜜柑を収穫したから、なにかつくってもらおうと思って」

と微笑みます。



「そうでしたかー、蜜柑の木がある海賊船なんて珍しいと思っていましたが、ナミさんの故郷からお連れになったものだそうですね」


「えぇ。小さいころから一緒に育ってきた大事な蜜柑よ」


そう言って、鮮やかなオレンジ色の実に当てた目を、愛おしそうに細めます。


「ナミさんの子供時代…さぞかし可愛かったのでしょうね」


「なによ、まるで今は可愛くないみたいな言い草ね」


ふくれた顔は幼く見えて、小さい頃の面影が映し出されるよう。



「いえいえとんでもない!今でもナミさんの笑顔はとても素敵ですよ!」


あらそう?と澄まして微笑む笑みが素敵だと思うのは私の本心で、

船の華である彼女が笑うと周りのクルーたちもつられて笑顔になるのです。


「私はね…小さい頃に育ての親を亡くして、航海術の勉強をしながらずっと泥棒をしていたの。だから普通の女の子みたいに、人形遊びとか、素敵な服とか、そういう可愛いものとは無縁だったわー」


「そうでしたか。お若いのに、苦労されてきたのですね」



ナミさんの凛とした強さの根源はそこにあるのでしょう。



「そうねー、でもま、ブルックから見たら私なんてまだまだ子供なんでしょうけど」


すると机に身を乗り出して興味津々といった様子で私の目を覗きこみます。



あ、目は無いんですけどね。



「ねぇ、あんたって私たちより随分と歳上なんでしょう?面白い昔話とか聞かせてくれない?」
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