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□Everybody, smile!
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「昔話ですか?」


「えぇ、なんでもいいわ」



たくさんの知識を手に入れたい、未知の世界を見てみたい…

そんな好奇心旺盛なところもまた、彼女の魅力です。



「そうですねー、昔話と言えるでしょうか…
私が生きていた頃の有名な実話ですが…」


「まだ皮も身もあったときね?」


「ヨホ、そうです。
あなたを見ると、この話を思い出すのです…」










それは昔々のこと、



長い長い戦争が続いていたある国に



敵国の軍隊が和平交渉にやってきました。



ところが言葉が通じないために

宗教指導者を捕まえに来たのだと勘違いをした住民たちは



武器を持ち、怒号をあげて軍隊を取り囲みました。





その時です、



敵国の司令官は兵士たちにこう命令を出しました。







「笑うんだ!」








にこやかに笑いかけてくる兵士たちを見て、



住民たちは敵国に戦意がないことをすぐに理解したのです。











「たったひとつの笑みだけで、切れていた互いの心が繋がった…」



「言葉も通じない海で、笑顔が国と国との壁を超えたのね。素敵……」



うっとりとした顔で遠い昔話に想いを馳せるナミさん。




「ところで、なんでその話で私を思い出すの?」



「ヨホ、先程私、言いませんでしたか?」



「……?」




考えを巡らせて不思議な顔をするけれど、

すっかり忘れていらっしゃるのでしょう。


私がその答えを口にしようとしたとき、


キッチンの戸がカチャリと開いて


ナミさんの待ち人が現れました。
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