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□ボタンのある服を着てくれ
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こういう機会を待っていた。



彼女がいったい誰のものなのか



わからせてやる。









「ボタンのある服を着てくれ」









「ゾロー、暇なら蜜柑の収穫手伝ってよ」


「暇じゃねぇ。俺は今から寝るんだ」


「それを暇って言うのよ!いいから早く」

「…しゃーねぇなぁ」





ナミさんナミさん、


ここにお手透きすぎてぼーっと海を眺める君の愛しのダーリンがいますよー



…なんていつものような軽口、ここ最近口にしていない気がする。



なんでかってそりゃあ、
本当に俺がナミさんの恋人になっちまったからさ。


付き合い出して1ヶ月、
照れ屋なナミさんはクルーの前で俺と関わるのを極端に拒むようになった。


繊細な彼女のことだ

きっと気付かれて冷やかされたり、気を遣われたりするのが嫌なんだろう。



そんなナミさんの気持ちを汲んで、

俺だって前以上に近付いたり恋人と匂わせるような行動は謹んでいる。


紳士なんだからそれ位当然だろう?


恥ずかしがりやなナミさんもそりゃあ可愛くて仕方ねぇけど

俺だって、ちょっとは寂しく感じるときがあるんだぜ?






「あれ、あれ採って!」

「あ?これか?」

「違っーう!その横よ」



例えばこうやってマリモにちょっとした作業を任せているとき。


以前だったら間違いなく俺に振られてきた仕事なのに、

恋人同士になってからというもの、ナミさんの方から頼み事をすることが減った。




「これか?」

「そうそう!ありがと」




マリモも文句を言いながら

ナミさんに頼られることが嬉しいんだと顔に出ている。

クソ気にくわねぇな…。






「もーらいっ」


「あっ!コラァ!!」


「痛ってぇっ!!」




それからこうやって何かとナミさんの手を焼かせるルフィ。

本当は蜜柑を奪おうなんて思っちゃいねぇくせに

構ってほしくて無茶を繰り返す。






「後で1個あげるから、勝手に取らない!わかった!?」

「ほんとかー?!サンキューナミーっ!!」




どさくさに紛れて抱きついてんじゃねぇよ。


純粋なふりしてたって
てめぇだって一端の思春期男子だろうが。










「サンジー、今日のおやつはなんだ?」


俺のこの苦悩なんて知りもしない陽気な長っ鼻が悪びれず聞いてくる。


「はぁーあ、野郎に頼られたって嬉しかねぇんだよ。俺は」

「は、はぁ…?サンジくん?」


「くん付けで呼ぶんじゃねぇ!そりゃナミさんの特権だ!」


「ひぃっ!」



罪のない狙撃手に八つ当たりをしてキッチンに向かう。


いや、知らねぇってのはきっと罪だ。


ウソップも

マリモもルフィも……
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