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□後編
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どんなつもりでも構わない。


そう言ったのは俺の本心。


だけど彼女のバラバラな心と身体を


まとめて手に入れたいと、そう思う。













「代行リアクション」









逃げる余裕を与えたまま唇を近づけても

彼女は抵抗を示さなかった。



問いかけるように寸前で数秒止めて、
痛々しく腫れた瞼が静かに閉じられたとき

触れるだけの軽いキスをした。



柔らかな頬を包む掌が涙でしっとり濡れて

両手の親指でそっと拭いながら再び口付ける。


それでもただ受け入れる彼女の健気な表情や儚い瞳がたまらなく愛しくて


目と目を合わせてゆっくりゆっくり頭を撫でると次から次へと涙が溢れて


ふいに俯いた彼女の細い両腕が

目線を合わせて膝立ちになっていた俺の首に回った。







「ナミさん……」


「……」


「ナーミさん、いいの?狼なんかに抱きついて」





耳の後ろでぐずぐずと鼻をすする音が聞こえる。

離れるどころか更に密着してくる身体に、

欲望を抑えるようにそっと背中をさする。





「ナミさんほら、そんなにくっつくと
食べられちゃうよ?」





最後の警告のつもりだった。


焦って離れてくれればいい。


そうすれば、いつもの紳士な俺に戻ってまた


おかわりは?なんて笑顔で問いかけられる。









「うん……」




身動ぎひとつせず鼻声で返ってきた弱々しい響きに

嫌でも胸が高鳴る。




「い、いや……うんって…
わかってる?ナミさん」






風呂上がりの薄着の胸元が鎖骨付近に当たり、

キメ細やかな首筋から石鹸の良い香りが漂う。



男ならわかるだろう。

冷静でなんていられるわけがないって……






「わかってるわ……
サンジくんは、どんな私でも受け入れてくれるって」



「……」







胸の高鳴りが収まらない。

嬉しくてたまらない。

きっと求められているのは慰めや励ましや癒しや安らぎ。

それでもいい。

どんなつもりでもかまわない。

彼女が俺を頼ってくれる。

身体を許してくれる。

ずっとずっと抱き締めたかった温もりが腕の中にある。




それだけで胸がいっぱいで



逸る気持ちを抑えてキッチンの隅のソファに彼女を運んで



ゆらゆらと虚ろう心ごと


俺のものにするもりで


何度も何度も優しいキスを落とした。
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